校長ブログ

外国人留学生33万人

2025.06.16 グローバル教育

6月16

 日本に在籍する外国人留学生が336708人となり、統計を取り始めた2011年以来で過去最多を記録したとのこと。(日本学生支援機構)この数字は、コロナ禍以前の水準を上回り、日本を学びの地として選ぶ若者たちが確実に増えていることを意味します。

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 背景には、いくつかの要因があるようです。まず注目すべきは円安の影響。世界的に物価が上昇する中、日本での生活費・学費の総額は、欧米諸国と比較して抑えられる傾向にあります。文科省によれば、欧米より安価に留学できるとの認識が、アジア諸国を中心とした学生たちの日本志向を後押ししているそうです。

 もう一つの要因は、国内の受け入れ体制の強化。政府や大学が奨学金制度の拡充やビザ制度の見直しを進め、留学生にとってより魅力的な環境づくりに注力しています。国立大学協会は、2040年までに留学生比率を30%にまで高めるという目標を掲げています。私立大学の動きも活発で、例えば、早稲田大学は2032年に、全学生の2割にあたる1万人の留学生を受け入れるという目標を掲げています。

 今回の発表によれば、上位10カ国はすべてアジア圏。中国が最多で全体の約4割を占め、ネパール、ベトナム、ミャンマーと続きます。特に、ネパール(前年比71%増)やミャンマー(2.1倍増)など、新興国からの伸びが目立ち、日本の魅力がより広範囲に伝わっていることを示しています。

 機関別で見ると、大学や専門学校など高等教育機関には約229千人、日本語教育機関には約107千人と、いずれも過去最多。教育の質や日本語教育の整備が、確実に評価されていると言えます。

 特記事項として、単なる学びだけではなく、卒業後の進路の選択肢が広がっている点があげられます。政府は労働力不足に対応するため、外国人向けの在留資格「特定技能」の職種を拡大しています。企業側も、国際的な人材の採用に積極的になっており、日本で学んだ留学生が、日本企業で働き続けるケースも増えてきました。併せて、日本企業の東南アジア進出により、日本語需要が高まっていることも日本留学の動機づけになっているようです。

 一方で、日本人学生もコロナ禍で大きく減少していた時期からの着実な回復を示しており、海外で学ぶ意欲が再び高まっています。ただし、コロナ前に10万人を超えていた水準にはまだ届いておらず、長期留学の拡大が引き続きの課題とされています。実際、現在の留学の6割が1ヶ月未満の短期留学であり、本格的な学位取得を目指す留学の数は限定的です。

 政府は、2033年までに日本人留学生を年50万人に増やす目標を掲げていますが、23年度は全体の6割を占める1カ月未満の短期留学が全体を押し上げているという事実もあります。高度人材の確保や大学の国際化のためには、学位取得を目指した長期留学の拡大が引き続き課題となります。

 昨年、「登録日本語教員」という国家資格も創設されました。これにより、日本語教育の質の向上と教員の地位向上が期待され、ますます多くの留学生を受け入れるための体制が整っていくことが期待されます。

 このように、制度面でも環境整備が進むことで、留学生数の増加、そして質の高い学びの機会が広がっていきます。これらの動向を受け止めながら、より開かれた学びの場を作っていかなければならないと考えています。