校長ブログ

デジタル教科書実証研究

2025.06.04 EdTech教育

6月4日

 本校は、文科省が推進する『学習者用デジタル教科書の効果・影響に関する実証研究』において、英語・数学・理科の3教科が採択されています。これは単に紙からデジタルへという転換にとどまらず、生徒の学びがどのように変わるのか、教師の指導や評価、そして、カリキュラム・マネジメントがどのように進化するのかを検証するには重要な取り組みとなるものです。

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 デジタル教科書は、紙の教科書と比較して、視覚・聴覚・操作感覚を駆使した多様な学習体験を提供できます。特に、本校のように、探究的な学びや多様な学力観を重視する学校にとって、生徒一人ひとりの個性や興味関心に寄り添いながら、個別最適な学びを実現する可能性を秘めています。また、単元やテーマごとに瞬時に関連資料にアクセスできたり、英語の音声をネイティブの発音で何度でも聴ける機能は、自己調整学習(self-regulated learning)の促進にもつながります。

 本校ではすでに、中1からオール・イングリッシュの授業を展開し、英語で思考し、表現する力の育成に力を入れています。実践では、特に、スピーキングとリスニングの強化に焦点を当て、デジタル教科書がもつ音声機能や録音・録画機能を活用し、生徒の発話の質の変化を追っていきます。英文読解においても、難解な語句に自動で注釈がついたり、本文中の単語をクリックすると即座に辞書にリンクされる機能は、読解のストレスを軽減し、より内容理解に集中できる環境をつくります。評価では、生徒の音読音声やスピーチ動画をクラウド上で蓄積し、ポートフォリオ評価にも活用していく予定です。

 数学では、関数や図形の単元において、動的幾何ソフトやグラフツールとの連携を通じ、数式と図形、グラフの関係性をリアルタイムに可視化する取り組みを進めます。これにより、抽象的になりがちな中高の数学において、WHYという根本理解を支援し、思考力・判断力の育成を目指します。また、生徒が解答過程を段階的に記録し、それを他者と共有・比較できる機能を通じて、協働的な学びやピアフィードバックの質も向上させていきたいと考えています。

 理科は今年から。実験動画、3Dモデル、シミュレーションなど、紙媒体では表現しきれなかったインタラクティブ教材が豊富に用意されており、探究的アプローチを可能にしてくれています。特に、物理・化学分野では、時間やスケールの制約で実際に扱いにくかった現象(例えば「光の屈折」や「原子モデル」)を、生徒が自らの手で操作しながら理解できるようになります。また、実験結果のデータをグラフ化したり、仮説と検証の過程をデジタルノートで記録することで、科学的思考力や論理的表現力の育成にも寄与すると期待されています。

 これらの取り組みは、生徒の学びにとっての変化だけでなく、教師自身の実践力・デジタル活用力の向上にもつながるものです。校内では時代の要請に対応できるネイティブ教員や日本私学研究所等の委託研究で実績を積み上げている若手・中堅教師がチームとなって、授業改革を進めています。グローバル化が進展する中、学びの質を高める挑戦が続けられているのです。