校長ブログ

未来を切り開く力

2025.06.07 学校生活

6月7

 各地の大学入学式では、社会や国際情勢の変化を見据え、未来を担う若者たちに向けて強いメッセージが発信されています。(日経2025.4.16)そこから見えてくるのは、知識やスキルだけではなく、多様性を認め合い、新たな価値を創造していく力の必要性です。

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 東京大学の藤井輝夫学長は、学びだけでなく、困難に立ち向かう力や誰かを支える心を育んでほしいと呼びかけられています。同大学では今春、学部の授業料を約11万円引き上げ、年間642960円としています。増収分は、留学奨学金の拡充や学修管理システムの構築に活用されるそうです。

 また、2027年に新設される『カレッジ・オブ・デザイン』では、留学生の受け入れを定員の半数に設定し、多様な視点を取り入れる試みが進められています。藤井学長によれば、ローカルな視点とマイノリティーの経験や文化を受け入れる姿勢を身につけてほしいとのこと。グローバル化が進む現代において、こうした柔軟な視野がますます重要になっているのです。

 東北大学の冨永悌二学長は「世界に挑戦する大学の一員であることに誇りを持ち、成長してほしい」と激励。同大学は、政府が創設した10兆円規模の大学ファンドにより「国際卓越研究大学」の第1号に認定され、2025年を「25年にわたる挑戦の初年度」と位置づけています。研究と教育の高度化に向けた大きな一歩となることは疑う余地がありません。

 昨年、東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、新たに誕生した東京科学大学では、田中雄二郎学長が異なる分野の人々が対話を交わし、新しい価値を創造する力を養う必要性を語り、医療と工学の融合を目指した「医工連携」による社会貢献を期待されています。

 通信制で学士号を取得できるZEN大学には、約3300名が入学。学長の若山正人氏は「超情報化社会」の新しい大学の形とし、オンラインのみで学位を得られる学びのスタイルの可能性を力強く語られています。

 北海道大学の宝金清博学長は「世界の価値観が揺らぐ今、多様性や国際協調、真理を求める力を養うことができる」と学生たちを鼓舞。早稲田大学の田中愛治総長も「世界はボーダーレス。異なる立場の人々を理解し、共に生きる姿勢が求められている」と語り、海外での学びの重要性に言及されています。

 SNSを含む情報環境の変化に触れたのは、法政大学のダイアナ・コー総長。「事実と虚偽が交錯する現代社会で、真実を見極める判断力を磨いてほしい」と学生に訴え、多様性・公平性・包摂性(DEI)を推進する同大の取り組みも紹介されています。広島大学の越智光夫学長は、今年が原爆投下から80年となる節目であることに触れ、戦争、核、飢餓などを考える『平和科目』を必修とし、平和について深く学んでもらうと述べられています。

 九州大学の石橋達朗学長は、博士課程進学者が減少している現状を憂い、社会の難題に向き合うには、より高度な専門性が必要と述べられ、4年後、6年後には大学院進学を呼びかけ、持続的な学びの姿勢を促しています。慶応義塾大学の伊藤公平塾長も大学院に進学し、世界から求められる人材になってほしいと語り、長期的な視野での学びの重要性を強調されています。

 大学トップの発信は、教育とは何かを再確認する貴重な機会を与えてくれます。今、大きな変革期にある大学教育における学びのあり方、支援の仕組み、そして人間形成のあり方は中高にも合い通じるものです。未来を創るために、生徒や学生が自らの道を切り開き、社会をより良いものに変えていける環境づくりは大人の役目なのです。