校長ブログ

神戸山手グローバルの英語

2025.06.12 教科研究

6月12

 かつて大手学習塾で英語の教鞭をとられ、その後、教育評論家になられたF氏との対談の一コマです。

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F氏:校長先生が国際教育学会の『Quality Education Vol.14』に描かれたに論文『グローバル化に対応するカリキュラム・マネジメント-神戸山手グローバル中高の英語教育について-』を拝読しました。まさに、理論と実践が融合された取り組みで、たいへん勉強になりました。今日は特に英語教育を切り口に、カリキュラム・マネジメントについてお話を伺いたいと思います。まず、大学入試改革の影響についてどのようにご覧になっていますか?

校長:大きな転換点ですね。かつてのセンター試験では、英語筆記200点、リスニング50点と、知識問題中心でした。しかし2021年から始まった大学入学共通テストでは、リーディング100点、リスニング100点と配点が均等化され、英語運用力が強く問われるようになりました。特に、読む力では単なる読解ではなく、「あなたならどうするか」と問いかける実践的設問が増えました。

F氏:読むことも、ただ情報を受け取るだけでなく、自分で主体的に関わる力が求められているのですね。

校長:その通りです。リスニングでも、イラストやグラフを読み取りながら、現実的な場面設定の中で判断する力が問われています。ただし、国立大学の個別試験ではまだ伝統的な読解中心ですから、両方に対応できる力が必要ですね。

F氏:そうした入試の変化に対して、学校現場ではどのようにカリキュラム・マネジメントを行っておられるのでしょうか?

校長:生徒の「学習者エンゲージメント」を高めることです。生徒自身が学びに前向きに取り組めるよう、教師は知識を教える存在(teacher)であると同時に、学びを促すファシリテーター(facilitator)でもなければなりません。

F氏:具体的にはどんな工夫を?

校長:例えば、授業は「英語で」といっても英語だけを押し通すわけではありません。状況に応じて日本語を使う「トランスランゲージング」を取り入れています。語彙や文法を深める際には母語の力も活用し、無理なく英語運用力を高めていきます。

F氏:英語の授業では、どのように読解力を育てていかれるのでしょうか?

校長:生徒が易しいと感じるテキストを選び、大量に読ませることを重視しています。難しすぎる教材ではワーキングメモリーが持たず、和訳依存になりがちです。まずは語彙認知力や推測力を養い、文構造の理解を強化していきます。

F氏:授業デザインも大事になりますね。

校長:そうですね。聞いて、見て、読んで、話すというサイクルを意識して、一つの教材を5ラウンド(リスニング、リーディング、音読、空所補充、リテリング)で徹底的に活用します。特にリテリング(本文を見ずに内容を伝える)は、情報整理・表現力の両面を鍛える効果的な手法です。

F氏:文法指導についても、工夫されていると伺いました。

校長:はい。例えば、レキシカル・グラマーという考え方などを取り入れています。toは「対象に向かって」という根本的なイメージから教え、前置詞や不定詞の意味を自然に理解させています。生徒の興味関心を引き、頭にすっと入る説明を心がけています。

F氏:英語嫌いの克服にもつながりそうですね。

校長:その通りです。そして、語彙力も重視しています。専門書を読めるようになるには40005000語、自力読解には80009000語が必要とされます。語彙は音、意味、形、統語など複合的な情報ネットワークとして定着させることが不可欠です。

F氏:4技能(読む・聞く・書く・話す)のバランスについては、どのように考えておられますか?

校長:どれかに偏らないことが大切です。たとえば、リーディングでは事前に語彙や表現を確認し、速読・精読・多読を組み合わせます。リスニングではオーラルイントロダクションやフラッシュカードを活用。ライティングやスピーキングでは、相手意識を持たせる活動に力を入れています。

F氏:単に知識を詰め込むだけでなく、実際に「使う」訓練を重ねるわけですね。

校長:その通りです。AIの個別最適化も活用しますが、最終的には教師の創意工夫が生徒の力を引き出すポイントになります。

F氏:これから英語を学ぶ生徒たちへのメッセージをお願いします。

校長:英語は単なる科目ではなく、世界とつながるための大切なツールです。失敗を恐れず、学びを楽しんでください。努力の先に、必ず「わかった!」「通じた!」という喜びが待っています。私たちも、皆さんを全力で支えます。一緒に頑張りましょう。

F氏:本日は貴重なお話をありがとうございました!