校長ブログ

海外ルーツの生徒とともに創る"グローバル"な学びの場

2025.06.20 グローバル教育

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 グローバル化を推進する本校には、今や、多様なバックグラウンドを持つ生徒が集い、今年はその多様性がこれまでになく際立つスタートとなりました。国際都市と言われる神戸を反映してか、元町、花隈、三宮には様々な国籍の方々がいるコミュニティがあります。そのような要因もあり、海外ルーツの生徒は全体の約3割を占め、とりわけ中国籍の生徒が多くなっています。

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 学校のグローバル化に伴うこの変化は、単なる人数の増加以上の意味を持っています。文化、言語、価値観の異なる生徒たちが一堂に会することで、学校という場がより多層的かつ多様な学びの空間へと進化し始めているのです。

 もちろん、急激な変化にはそれに伴う課題もあります。多くの生徒が日本語に不慣れであり、教室での授業理解や日常会話において「言語の壁」があることもまた事実。学習面だけでなく、友人関係や学校生活への適応にも時間がかかる場合もあるかもしれません。しかし、それを問題として捉えるのではなく、教育の機会として捉え直すことこそ、本校の教育理念にふさわしいあり方だと考えています。

「学びの保障」に向けて、本校では様々な支援体制を整えています。日本語支援で言えば、それ専門の教職員を配置。そして、4月にプレイスメントテストを行い、放課後に特別プログラムを設置し、2人のネイティブ教員が日指導を展開しています。また、海外経験が豊富な卒業生が定期的にボランティアで指導に加わり、生徒一人ひとりの到達度に応じたきめ細やかな指導を展開してくれています。加えて、今月から関西国際大学から日本語教師を志望する学生のボランティア支援もあります。

 すでに、海外ルーツの学習指導で定評のある教育機関の協力も得て、より体系的かつ継続的に日本語が学べる場を整備しています。学校での国語や英語の授業ではなるべく同時通訳イヤホンを使わないように努力していただいているので、短期間で日本語能力が向上する生徒も増えています。実際、「日本語の授業が楽しい」「前よりもクラスメートと話せるようになった」と話す生徒の声も届いており、一定の手応えを感じています。

 もうひとつの大きな力となっているのが、幼児期に来日したり、日本で生まれ育ち、母語と日本語の両言語が流暢なバイリンガルの存在です。(元々、本校には様々な国籍の生徒が学び、卒業している歴史があるのです)自分たちも同じ立場だったと寄り添いながら、有益なアドバイスを行ってくれています。その姿は、まさに多文化共生の実践であり、ロールモデルとなっています。

 こうした取り組みを通して、教職員も大きな学びを得ています。異なる言語や文化を持つ生徒たちと向き合うことで、伝わるとは何か、教育とは何を育むのかといった根本的な問いに立ち返る機会を得ているのです。同時に、日本人生徒にとっても、こうした環境が貴重な多文化共生理解の場となっており、教室内外での交流が育まれています。

 今後も、言語や文化の壁を乗り越えて、すべての生徒が安心して学び、成長できる環境づくりを進めて参ります。その中で育まれる共感力、柔軟性、多文化理解こそが、これからの時代を生き抜く力になることは言うまでもありません。生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育を、学校全体で力を合わせて実現して参ります。