校長ブログ
英語教育を考える①ーメタ文法I
2025.07.03
教科研究
7月3日
今回は、教育評論家のK氏と英語のメタ文法についての対話からです。
K氏:お時間をいただきありがとうございます。今日は、メタ文法という概念についてお伺いしたいんです。英語教育の現場で活用できるものなのでしょうか?
校長:メタ文法とは何かというと、文法についての考え方そのものに気づかせる力のこと。つまり、文法をただ知識として覚えるのではなく、その文法がなぜそのように働くのかを考える視点ですね。なお、メタ文法には大きく文法的側面、語彙的側面、音声的側面に分けられますね。
K氏:いわば、英作文でよくある文法を使うための文法みたいなイメージですね。
校長:日本語で言えば、主語と述語の一致という説明を丸暗記するだけではなく、言葉は何を伝えたくて、どういう構造で意味を成しているのかを考える。それを英語の授業に持ち込むわけです。生徒自身が文法の背後にある構造や機能を意識できるようになると、応用力が高まりますね。
K氏:なるほど。でも現場の先生方は、また新しい理論が来たのかと戸惑いませんか?
校長:理論というよりは、"気づき"を促す道具と考えるとよいと思いますよ。特に、英語を第二言語として学ぶ日本の中高生にとっては、なぜそうなるのかを考えることが、表現力の向上に直結するのは事実ですからね。
K氏:具体的にはどんな指導になるのでしょうか?
校長:例えば、"I have visited Kyoto many times." という現在完了の文。この文を教えるとき、従来はhave+過去分詞という形と用法(経験・継続・完了・結果)を覚えさせていました。でもそれでは応用がきかない。メタ文法的なアプローチでは、なぜ haveを使っているのかという問いを立てる。生徒と一緒に、主語の現在との関係を残すから、現在完了になると考えるんです。
K氏:ここでは文法の形式と意味の関係に気づかせるということですね?
校長:そう。形式だけじゃなく、機能や意味をメタ的に捉えることで、生徒たちは自分の頭で言語を組み立てるようになる。英語を使える言葉として扱うためのステップですね。これは言語活動や探究的な学びにもつながります。
K氏:今のような対話的なやり取りも授業に取り入れておられるんですか?
校長:今は授業はしていないのですが、時折、校長室に質問に来る生徒には意味のある問いを投げかけるようにしています。例えば、"Why do we say 'I am going to study,' not 'I will study' in this context?" と。文法事項そのものより、その使い方にフォーカスするわけです。生徒同士での対話や思考のプロセスを重視します。
K氏:探究的な姿勢が育まれそうですね。
校長:ええ。しかも、こうしたアプローチは文法だけにとどまりません。自分の思考を言語化する力が伸びますし、他者との協働的な学びも進む。文法を教えるのではなく、文法で何ができるかを考えさせる。それが英語で考えるという力になるのです。
K氏:今の教育改革の文脈とも合致していますね。資質・能力ベースで言えば、思考力や言語能力、そしてメタ認知力が一度に育つ印象です。
校長:そこがねらいです。文法を教えるのではなく、文法を通して思考する力を育てる。先生方にお伝えしているのは、問いかけと対話を中心にした授業を意識すれば、誰でも取り組めるということです。
K氏:今日の話、とても刺激的でした。生徒がことばの仕組みに気づいたときの表情が目に浮かびます。ありがとうございました。(続く)
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