校長ブログ

英語教育を考える②ーメタ文法Ⅱ

2025.07.04 教科研究

7月4日

前回の続編です。

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K氏:前回の現在完了の例、とても印象的でした。今日は、仮定法や関係詞、時制といったところにもメタ文法が通用するのか、ワンポイントレッスンをお願いしたいのです。

校長:よいテーマですね。実は、こうした文法事項ほどメタ的に考えることで本質が見えてくるんですよ。

K氏:仮定法は特に難しいと生徒も教師も感じている印象です。

校長:ええ。例えば、 'If I were you, I would...' という形。ここで重要なのは、なぜ現在の話をしているのに、過去形を使うのかということ。問いとして、現在の話なのに、なぜ、過去形使っていると思う?が考えられますね。

K氏:面白い投げかけだと思います。

校長:生徒は最初は戸惑いますが、現実とは違う、想像の話をするとき、人間は過去を使うんだと気づくんです。つまり、仮定法の過去形は、時間の過去ではなく、現実からの距離を表しているということを理解するんです。

K氏:そうすると、"If I had studied harder..."という過去完了の仮定法も時間と現実からの二重の距離だと気づけるわけですね。

校長:そう。現実をずらすから過去形という意識をもてば、生徒は英文を型ではなく意味として理解するようになります。これがメタ文法の力と言えます。

K氏:関係詞もまた、定着しにくい分野です。who, which, thatの選び方で混乱している生徒も多いですし...。

校長:関係詞は構造の理解がポイントです。文を2つ並べて、これ、どうやったら一文になると思う?と聞きます。例えば、"I know a boy. He speaks Chinese very well." これを一文にすると、"I know a boy who speaks Chinese very well. になるわけですが、この仕組みを生徒に発見させるんです。

K氏:教え込むのではなく、構造を発見させるということですね。

校長:生徒が関係詞とは、文と文をつなぐ働きがあり、文の中に別の文を組み込むものだと理解すれば、whowhichを機械的に選ぶよりも、ずっと深く定着します。

K氏:確かにそれは、言語の構造を捉えるメタ的視点ですね。次々にお聞きして恐縮ですが、時制もまた、生徒がミスをしがちなところだと思います。

校長:時制というのは、単に"いつ"という情報だけでなく、話し手の視点を表すものなんです。過去完了を教えるときに、なぜ二つの過去を区別する必要があるのか?という問いを立てたとします。例えば、「昨日、試験を受ける前にその本を読んでいた」という文を考えたとき、読み終えたタイミングを正確に伝えるにはhad+過去分詞が必要なんです。これは時間軸を意識する力を育てます。

K氏:つまり、時制は英語的な時間の捉え方を理解する鍵になると。

校長:そう。英語の文法はすべて世界の見え方に直結しています。それを考える力を育てるのがメタ文法の役割ということになるのです。

K氏:聞いていてワクワクしますね。授業が考える場になっています。

校長:時にはこういう授業があってもよいと思うんです。文法という知識を超えて、生徒が言葉の意味世界を構築していけるようにカリキュラム・マネジメントしていきたいと思います。英語の授業の一部が思考の授業になったとき、生徒の目は輝きますよ。

K氏:元気のでるお言葉、ありがとうございました。