校長ブログ
人が集まる場所
2025.07.15
トレンド情報
7月15日
先日、神戸港の突堤に新しく誕生したGLION ARENA KOBE(ジーライオンアリーナ神戸)を訪れる機会がありました。目の前に広がる270度の海、背後に広がる神戸の街並み。そしてその中心に、約1万人を収容する関西最大級の多目的アリーナ。何とも心躍る光景でした。

このアリーナは、男子バスケットボールBリーグ2部に所属する神戸ストークスの本拠地であると同時に、音楽ライブなどにも対応できる多機能型施設。TOTTEI(トッテイ)と名付けられたこのエリアには、南側に緑豊かな公園が整備され、10を超える飲食店が軒を連ね、地域の新たなにぎわいの核となっています。同じ湾岸エリアには神戸ポートタワーやメリケンパークといった人気観光地もあり、三宮や中華街がある元町エリアなど、街の回遊性の向上にも寄与すると期待されています。
このアリーナに足を踏み入れながら、教育にも通じる大きな学びの構造を感じました。すなわち、人が集まる場所には、必ず交流が生まれ、対話が始まり、未来への意志が芽吹くということです。
GLION ARENAだけではありません。関西には、地域の誇りとしてのプロスポーツ施設がいくつも存在しています。例えば、大阪府吹田市にあるパナソニックスタジアム吹田。サッカーJ1のガンバ大阪の本拠地であり、民間の寄付により2015年に完成しました。行政と民間、そして市民が一体となって築いたこのスタジアムでは、単に試合を開催するだけでなく、来場者の心に届く"場づくり"が行われています。
興味深いのは、スタジアムの運営を担うガンバ大阪がライト層、つまり、サッカーにさほど馴染みのない層にも足を運んでもらうためにトークショーやグルメフェアなど、毎試合2〜3件の企画を打ち出している点です。まさに、「学びの場づくり」のスピリットが感じられました。さらに、JリーグIDによる観戦データを活用し、個々の来場者に合わせたメール配信を行うなど、ICTの活用も進んでいるとのこと。全体で成長を目指し続けているのです。
勿論、関西の集客をけん引するのは阪神タイガースの本拠地である阪神甲子園球場。2024年には延べ457万人超の来訪者を記録し、全国第4位とのこと。1924年の開業から100年。外観の趣を残しながらも、座席間隔の改善や環境への配慮など、時代に即した変革が進められています。不易流行の絶妙なバランスの取り方には、教育現場におけるカリキュラム・マネジメントにも通じるものがあります。
この流れは、関西各地に広がっています。京都府向日市の競輪場跡地や、大阪市舞洲のおおきにアリーナ舞洲などでも改修や新設の計画が進んでおり、滋賀県の滋賀ダイハツアリーナも含め、関西一円で「地域×スタジアム」の新たな挑戦が続いています。こうした動きを単なる経済政策や観光戦略としてではなく、地域社会が一体となって"新しい公教育のかたち"を模索しているように感じます。つまり、学びは学校の中だけにあるのではなく、「集まる場」にこそあるのです。
本校でも、こうした地域の動きを単に"外の世界"として眺めるのではなく、教育活動と接続する試みを強めていきたいと思います。生徒たちが、自分たちの住む地域の未来に参加する実感を持てるように学びのフィールドを校舎の外へと広げていく所存です。「集う力」は、「学ぶ力」へと転化します。そしてその先に、「変える力」が生まれます。地域とともに、未来をつくる教育を実践していきたいものです。