校長ブログ

働くミャンマー人の急増

2025.07.24 グローバル教育

7月24日

 日本で働くミャンマー人が急増しています。在日ミャンマー人は134574人(2024)と、前年比55.5%増。10年前と比べると13倍に達し、その増加率は他の国籍と比較しても際立っています。背景には、2021年に起きたミャンマー国軍のクーデター、経済の混乱などがあります。これらの要因により、多くの若者が国外、特に比較的ビザが取得しやすい日本に活路を求めているのです。

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 この動きは、人手不足と利害が一致する形で進んでおり、製造業、介護、流通などの現場でミャンマー人の活躍が広がっています。移民の受け入れに慎重だった日本で制度上移民とはされない形での外国人労働者受け入れが拡大しており、静かな「開国」が進んでいると言えます。

 コンビニ業界では外国人アルバイトの割合が増えており、202411月時点でローソンでは約14%が外国人です。そのうちミャンマー人は約2000人と出身国別で6位。また、技能実習生として日本語を学び来日、日本で長く働きたいと希望する者も増えているようです。

 日本はこれまで移民政策を採らないと繰り返してきましたが、技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務といった在留資格の枠組みを通じて外国人労働者を受け入れてきました。しかし、この制度は構造的な限界が指摘されています。特に、技能実習制度は、名目上は技術移転による国際貢献を目的としているものの、低賃金労働者を生み出してきたという事例もあります。政府は2027年に「育成就労」制度への移行を決定し、12年働けば転職可能とするなどの改善策を講じる方針を打ち出していますが、一定期間の勤務地の制約など、問題点は残されています。

 加えて、日本国内ではアジア人は安い労働でも対応してくれるという時代錯誤の感覚もあります。アジア諸国の経済成長により、現地の賃金水準は上昇しており、円安と賃金停滞が続く日本の労働環境は、もはや魅力的とは言いがたくなっているのです。

 あるメーカー幹部は、昔の外国人労働者は節約志向でしたが、今は生活に余裕があるように見えると述べており、従来のステレオタイプが通用しなくなっていることがわかります。日本が今後もアジアからの人材を必要とする構造は変わりません。近隣の韓国や台湾は、外国人受け入れに積極的な制度設計を行っています。関西国際大学の毛受敏浩客員教授は、人材獲得競争では日本語教育の充実や定住支援など、長期的な受け入れ政策が不可欠であることを指摘しています。

 日本人が経営する人材派遣会社が日本語やビジネスマナーを教え、来日支援を行っているところもあります。在日ミャンマー人の急増は、国際的な動向と国内の構造的課題が交差する象徴的な現象。現在は需要と供給が噛み合っていますが、将来ミャンマーの民主化が進めば、帰国希望者が増える可能性もあります。今後、人材の受け入れに対する国民的合意形成と、制度の抜本的見直しが求められることは自明です。