校長ブログ
英語教育を考える⑬ーAIとの共存
2025.08.23
教科研究
8月23日
J先生との対話からです。AIと英語教育の融合は、新たな学びの可能性を広げると同時に、指導のあり方そのものを問い直しています。AIの力を借りながら、学習者の主体性や批判的思考をどう育むかがポイントです。
J:最近のAIって、本当にすごいと思います。AIと英語教育の融合が進化するのはよいんですが、生徒がライティング課題などをAIに丸投げしてるっていう声もあって...正直、ちょっと心配です。
校長:よくわかるよ。ただね、AIの対応力は否定できないレベルだから、大切にしたいのはどう使うかということ。過度な依存は要注意ってところかな。指導が必要だね。
J:確かに。AIが直してくれるから自分は考えなくてよいって思わせてしまったら、本末転倒ですから...
校長:第二言語習得(SLA)研究では、英語教育におけるAI活用に多くの注目が集まっているよ。例えば、ライティングでは文法修正だけでなく、文章構成や論理性へのフィードバックも可能。これらを使って生徒が自分の誤りに気づくようになれば、メタ認知の力が育つとも言えるよ。
J:なるほど。AIとの対話練習ツールも進化しており、生徒たちは機械相手に、心理的な抵抗感なく英語を話す練習ができます。これは発話量を増やすという意味では、大きなメリットだと思います。発話量が増える分、アウトプット仮説(output hypothesis)とも接続するのではないでしょうか?
校長:間違えても恥ずかしくない相手って大切だね。入り口としては十分価値があるんじゃないかな。でも、語彙の習得に本当に効果的かどうか、自然な文脈の中でどう使われるかは今まさに研究が進んでいる段階だよ。
J:AIは発音までチェックしてくれます。プロソディの評価、つまり、抑揚やリズムの指導にもAIは踏み込んできています。
校長:ただし、音素レベルの正確さばかりにとらわれると、"通じる英語"の本質を見失うよ。発音矯正と国際的なコミュニケーションのリアルとのバランスが求められるからね。
J:はい。自動採点についてですが、TOEFLやIELTSもAIを導入していますが、自由英作文やスピーキングになると、まだまだ人間の柔軟な判断には及ばないように思います。
校長:自由英作文は、定型化されたアルゴリズムでは捉えきれない部分があるからね。評価の信頼性だけでなく、どんな英語力がよいのかという本質的な議論になるよ。AIは訓練されたデータに依存するので、特定の話者の発音が優遇されてしまうこともあるんだ。倫理性や公平性の対応なども、これから向き合うべき課題だね。
J:教師とAIの関係も変わりますね。授業の中でAIをどう位置付けるのか、プロンプトのデザイン力も教師の新たな力量になってきています。
校長:仰る通り。AIにはできないことを意識して設計することが、これからの教育の肝。学習者一人ひとりのエラーを可視化するような支援ができれば、個別最適化の本当の意味が見えてくるんじゃないかな。
J:倫理の問題も見逃せないと思います。AIの判断が特定の発音を優遇したり、データの偏りが評価の公平性を損なうリスクが考えられます。生徒のデータ利用も慎重にすべきですし...
校長:AIは万能ではないよ。だからこそ、どのように活用するかの設計責任は、常に我々指導者側にあるんだ。これは技術の話であると同時に、教育の本質にかかわることだと思うよ。
J:AI時代の英語教育、いよいよ面白くなってきました。
校長:技術革新を恐れるのではなく、学びの本質から問い直す。その姿勢を忘れずに教育活動に邁進していきましょう。
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