校長ブログ

卒業生が活躍する大学ランキング

2025.08.08 大学進学研究

8月8日

「企業が評価する大学ランキング」(日本経済新聞社+日経HR)には、企業が"採りたい人材"を最も多く輩出している大学にスポットが当てられています。総合ランキングでは一橋大学が首位。その要因は、単に偏差値や知識量ではなく、「行動力」「コミュニケーション能力」「知力・思考力」「成長力」という4つの力において、すべてで最高評価を獲得したという点にあります。

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 企業の人事担当者は、「論理的思考力がある」「リーダーとしての資質がある」「キャリアパスが明確」といった点を高く評価しています。これはまさに、個々の学生が将来の社会をどのように見据え、主体的に道を切り拓いているかという、深い学びの成果そのものと言えます。

 一橋大学は2023年、新たな学部「ソーシャル・データサイエンス学部」を開設しました。このように、現代社会が抱える課題と真正面から向き合い、それに応える新たな学びの場を創出するという姿勢が、大学の持つ教育的価値をより一層高めています。また、キャリア支援室においても、現場経験を持つアドバイザーによる実践的な支援体制が整えられ、年間2,500人近い学生が利用するとのこと。教育とキャリア支援の連動こそが、"社会に開かれた学び"の本質なのです。

 総合2位に選ばれた上智大学は、「語学力に優れている」「グローバル対応力がある」といった声が寄せられており、留学を通じた異文化理解や国際性の育成が成果として表れていると考えられます。

 総合3位の名古屋大学は、研究と社会実装を橋渡しする産学官連携の取り組みが評価され、「成長力」において2位という結果につながっています。これは、学問を深化させるだけでなく、それを社会の中で活かすという力が身についている証左です。

 一方、「採用を増やしたい大学」として首位になった金沢大学も注目に値します。語学力や異文化コミュニケーション力が評価されており、62カ国以上との国際交流協定、博士課程学生と企業を結ぶ「ハカセプラス」といった先進的な取り組みが成果を上げています。博士課程の学生と企業の交流会では、産業技術総合研究所やNECなどが参加し、約50人の学生が自身の研究内容を発表しています。これは、地方大学であっても教育の質と方向性次第で全国的な注目を集められることの好例です。

 そして、「注目している大学」では芝浦工業大学がトップに立ちました。専門性と技術力に対する企業からの信頼が厚く、2026年には学部を再編し、副専攻制度を導入するなど、文理融合・実践重視のカリキュラムにシフトしています。教育の質保証という観点からも、他大学の教員も利用できる共同利用拠点に認定されています。若手教員にはシラバスの書き方などを教え、中堅教員には技術に関する知的財産についての講義などを提供しています。

 調査を通して明らかになったのは、今の大学教育において問われているのは「知っているか」ではなく、「社会にどう働きかける力を持っているか」ということ。つまり、知識に加えて、実行する力、人と関わる力、考え抜く力、そして何よりも、成長し続けようとする姿勢が重視されているのです。

 大学は"学歴"を提供する場であると同時に、"人間力"を育む場でなければなりません。教育の質を問う時代において、真に価値ある大学とは、卒業時の知識量よりも、社会に出た後の実践力を育てる場であることを、今回のランキングは改めて示してくれたように感じます。