校長ブログ
主体性評価
2025.08.20
カリキュラム・マネジメント
8月20日
文科省が2030年度以降に実施を見据えた「学習評価の見直し案」を発表しました。その中心にあるのが「主体的に学習に取り組む態度」の評価の比重を小さくするというものです。
主体的な態度は、2020年度以降、小中高で順次、評価の観点に加えられました。教科ごとに、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点についてA~Cで評価し、この観点別評価に基づき、各教科の評定を小学校は3段階、中学校は5段階でつけています。そしてそこから内申点が算出され、高校入試や大学入試などで活用されるという仕組みです。
今回の見直し案によると、評価観点を「知識・技能」「思考・判断・表現」の2つに再編した上で、主体性は総合所見欄などに記述したり、特に強い主体性をみせた児童生徒に「○」をつけたりするとのこと。同省は「過度な評価材料集めを抑制し、段階別に評価することが難しいという特性を踏まえた評価方法にしたい」と説明しています。
小中高で導入されたこの「主体性の評価」は、まさに激しく変化する時代を生き抜く子どもたちに、自ら課題を見出し、学んだ内容を生かして解決をめざす人材を育成したいとのねらいがありました。しかし、同時にこの数年間、何をもって主体性とするのか、どう評価すれば納得性があるのかといった戸惑いの声が聞こえてきたのもまた事実。
「知識・技能」はテストの点数、「思考・判断・表現」は発表やレポートなどである程度可視化できますが、主体性はどうでしょうか?ノート提出や挙手の頻度で測ろうとする例も見受けられましたが、それは果たして主体性の深さを表しているのでしょうか?そういった定量的なデータが、逆に勤勉さや素直さの評価に置き換わってしまい、本来の目的から離れてしまっている感は否めません。
こども家庭庁の23年度調査によると、「うまくいくかわからないことに取り組める」と答えた日本の若者の割合は米国やフランス、ドイツなどと比べて半分以下であり、日本の若者の自己肯定感や挑戦意欲が他国と比べて低いことも明らかになっています。そうした中で、主体性の育成そのものを後退させるような誤解が生まれないよう、評価方法の見直しは慎重に進める必要があります。
今回の見直し案では、主体性は教科評定の観点から外れ、「総合所見欄」や「特記欄」に移すことで、子どものよさや伸びしろを柔軟に記述できる方向へと転換される見通しです。これは、教師の記述力や観察力が問われることにもなりますが、むしろ教育者としての力量が真価を発揮する場面とも言えます。
一律的な行動を促す管理的な評価ではなく、子どもの可能性に光を当てる言葉を紡いでいく。その営みを通じて、評価が子どもを育てる力になるのです。この変化を、教育実践の質を問い直す好機として、しっかりと受け止めたいと思います。