校長ブログ

気候変動

2025.08.06 教科研究

8月6日

 酷暑の夏が世界を包み込んでいます。日本では6月が観測史上最も暑く、30日には全国100地点で35度を超える日を記録しました。7月も引き続き、各地で「10年に一度」と言われる猛暑が続きました。スペインやイタリアでは40度を超える日が連続し、屋外労働の制限や休校措置といった緊急対応がとられています。もはや気温の異常は、異例ではなく現実となりつつあるのです。

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 専門家は、今年6月中旬の異常な高温が人為的な温暖化なしには説明できないと結論づけています。温暖化はもはや抽象的な未来の問題ではなく、生活に直結する「いま、ここ」の課題です。米国でも熱波による山火事や洪水が頻発し、フランスの研究機関は気候変動が降雨量に与える影響を明らかにしています。

 気象庁によれば、6月の日本の平均気温は平年を2.34度も上回りました。これは1898年の統計開始以来、最も高い数値です。国際的にも、今年5月は観測史上2番目の暑さとなりました。さらに、平均気温の上昇幅がついに1.5度を超えたという事実は、パリ協定が掲げる目標との乖離を突きつけます。

 この気温上昇は、単に暑い夏を生むだけではありません。農作物の不作や果実類の価格高騰、さらには鉄道のレールの歪みやデータセンターの浸水といった、インフラへの直接的な被害にまで及んでいます。事実、今年6月には東北・山形新幹線で異常が発生し、気温の影響が調査対象となりました。これからのインフラ整備は、「耐暑性」「耐災性」を前提とした構造転換が求められているのです。

 世界的に見れば、GDPへの影響も深刻です。スイス・リー・インスティテュートは、今世紀半ばに気温が22.6度上昇した場合、世界のGDP10%以上減少し、アジア・アフリカでは20%を超える経済縮小が予測されると報告しています。気候変動の影響は、経済、農業、社会、そして教育と、あらゆる領域に波及します。

 日本は、気候変動に対するインフラの堅牢性において世界168カ国中138位。これは単なるデータではなく、未来世代への責任を問う警鐘です。教育に携わる者として、この現実を直視し、子供たちとともに気候変動とともに生きる力を育んでいかなければなりません。気候問題への関心は、選挙という民主主義にも影響を及ぼしはじめています。もはやこれは理科や地理の話ではないのです。

 未来を担う子供たちに何を手渡すか。その問いに対し、今こそ、言葉と行動で応えなければならないと強く感じています。