校長ブログ
生成AIとエネルギー
2025.09.12
教科研究
9月12日
生成AIに問いかけることが増えているこの頃ですが、その背後で、膨大なエネルギーが消費されていることをご存じでしょうか?
生成AIは今や、ビジネスや創造活動など、様々な分野で利用されていますが、莫大な電力を必要としているのです。学習段階では、NVIDIA製のGPU(画像処理半導体)を何万台と並列稼働させ、モデルは日夜進化しています。ゴールドマン・サックス(米)の試算では、世界中のデータセンターが消費する電力は2027年には89ギガワットに達し、これは2024年比で約1.6倍にもなるとのこと。
この数字を日常の感覚に置き換えると、起業家イーロン・マスク氏のxAIが開発した「Grok3」は20万台のGPUを用いたモデルで、わずか一つのデータセンターで家庭5万~8万世帯分の電力、つまり、原子力発電所4分の1基分(25万キロワット)を消費しています。
「ググる」ような感覚でAIに問いを投げかけるたび、その処理には検索エンジンの10倍近い電力が使われているのです。この事実は、「問いを立てる力」を育てようとしている教育現場にとって、非常に象徴的な意味を持っています。課題を発見し、問いを発することが未来を切り開く源泉であると同時に、今この瞬間にも社会資源を消費している--そうした「問いの重さ」に、もっと自覚的でなければなりません。
データセンターの立地は、寒冷で税制優遇のある地域が好まれます。例えば、アイルランドでは、2023年時点で国全体の電力消費の21%がデータセンターに費やされています。米国でもこの比率は増加中で、2028年には12%に達するとの予測もあります。
AIはDXに不可欠な技術であり、その導入は今後も加速するでしょう。しかし、GX(グリーントランスフォーメーション)とのバランスをどのように取るか--この問いは、次世代を育てる我々にも突きつけられています。
対策は進みつつあります。低消費電力のアルゴリズム設計や、より効率的な半導体の開発、さらには次世代原子力発電であるSMR(小型モジュール炉)の活用も検討されています。また、データセンターの立地を分散させ、局所的な電力集中を回避する設計も重要です。
生成AIは、確かに教育を変え得る存在です。しかし、その利便性の陰で生じる環境負荷にも目を向け、どのような問いを発するか、その問いが生み出す影響とは何かを、深く見つめ直すことが求められているのです。