校長ブログ

インドの飛躍に見る未来社会

2025.09.05 トレンド情報

9月5日

 宇宙工学を専攻する大学院生との対話の中で、インドの宇宙開発の話題に及びました。その際、インドの飛躍という言葉が印象に残りました。

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 宇宙開発というと、国家が巨額の予算を投じて進める一大プロジェクトというイメージがあります。しかし、その枠組みを根底から変えつつあるのが、今まさに台頭するインドの動きなのです。

 ポイントとなるのは、政府と民間の連携。2020年にインド政府が宇宙分野への民間参入を正式に認めて以来、開発競争は加速度的に進化しています。注目すべきなのは、ISRO(インド宇宙研究機関)出身者たちが次々と起業し、宇宙スタートアップを立ち上げている点。2023年に設立されたピアサイト社は、わずか9カ月で海洋監視衛星を開発・打ち上げるという偉業を成し遂げています。

 あるインド企業のCEOは、技術的に可能であれば、伝統にとらわれず方法を変えると述べられています。これは、まさに変化を恐れず、柔軟に対応する学びの本質と通底する考え方ではないでしょうか?

 興味深いのは、こうした動きが単なる技術革新にとどまらず、国家戦略として明確に位置付けられていること。ISRO本部があるベンガルールにはインド理科大学院という理工系最高峰の大学があり、宇宙関連企業と人材が集積するエコシステムが築かれています。トップ研究者がスタートアップに伴走する体制も整っています。

 国際通貨基金の見通しによれば、2025年にはインドが日本のGDPを上回るとされています。14億人という人口に支えられた多様で豊かな人材、その中核にあるISROの技術蓄積、そして民間の機動力。これらが相まって、インドはグローバルサウスの雄として、宇宙開発においても確固たる地位を築こうとしています。

 衛星打ち上げのコストが下がった今、もはや宇宙は国家のものというよりはむしろ、多くの民の力によって拓かれるフロンティアとなりました。スペースXのような企業がそれを証明してきた中、インドの取り組みは、その民主的価値観を体現しています。

 教育の世界にも通じるのは、誰もが挑戦できる環境を整えることの重要性です。宇宙は遠くにあるものではなくなりつつあります。今、インドが示してくれているのは、未来を拓く力が国家ではなく、学びの場と志という、希望に満ちたメッセージなのかもしれません。