校長ブログ
留学生増へ大学定員緩和
2025.09.13
グローバル教育
9月13日
文科省が打ち出した新たな大学政策が、関係者の間で大きな注目を集めています。それは、定員規制の緩和という一見テクニカルな制度変更に見えて、実は日本の高等教育の在り方そのものに関わる深い問いを含んだ施策です。
今回の政策転換の背景には、少子化の進行と世界規模での高度人材獲得競争の激化があります。来春から、留学生比率を現状から10ポイント以上高める計画をもつ大学については、学部単位で定員超過を110%未満まで容認するという柔軟な運用が始まります。大学にとっては、これまでの定員を超えたら「罰則」という硬直的なルールから一歩踏み出し、挑戦する国際化への道が開かれることになります。
日本にとって、優秀な留学生を迎えることの意義は単なる人数の問題ではありません。彼らの存在は、学内に異文化との出会いと多様な価値観と触れ合う機会をもたらします。授業が英語で展開される、キャンパスで多言語が飛び交う、研究室に国籍を問わぬ若者が集う風景は、グローバルな知の共同体の象徴に他なりません。
そのためには制度面での支援に加え、日本語教育や生活相談の体制、さらには卒業後の進路に至るまで、一貫したサポートが必要です。文科省はこの点についても、授業料の柔軟な設定、在籍管理体制の強化、留学生の出身地偏在の是正など、多角的な条件整備を求めています。
一方で、OECDによると、日本の留学生比率は3%にとどまり、イギリスやカナダの15%とは大きな差があります。この国際化のギャップを埋めるには、英語で学位が取得できるプログラムの拡充、教育の質保証、そして何より"選ばれる大学"になるため改革が求められます。
例えば、東京大学が新たに開設する「カレッジ・オブ・デザイン」では、定員の半数を留学生とし、全授業を英語で行う方針を示しました。このような取り組みは、学問の場を開かれた知の空間に変える重要な一歩です。
今、「閉じた学び」から「拓かれた共創」への発想の転換が求められています。未来を担う若者たちが、国籍を問わずともに学び合う場をどう設計していくか。神戸の丘の上から見える風景も、今後ますます多様で豊かなものになるはずです。その起点は、やはり人。留学生の国内就職率は51.6%(2023)とどまっていますが、政府は2033年に60%まで引き上げる方針を掲げています。