校長ブログ

未来社会のデザイン

2025.09.23 学校生活

9月23日

 大阪・関西万博が開催されている夢洲(ゆめしま)を訪れると、そこは未来社会の縮図のようでした。見えてきたのは、AIや先端科学が人の生き方に深く関わる時代の姿です。

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 石黒浩教授が手掛ける「いのちの未来」パビリオンでは、祖母と孫が登場する物語を通じて、人とアンドロイドの境界が薄れていく未来が描かれていました。寿命を迎える祖母が「人間として生を終えるか、アンドロイドに記憶を引き継ぐか」という選択を迫られる場面は、生命観そのものを問い直す体験でした。石黒教授は「技術は待ってくれない。だからこそ、未来をどうつくるかを自分自身で考えねばならない」と語ります。その言葉は、まさに今を生きる私たちへのメッセージでしょう。

 また、落合陽一准教授の「null2」では、鏡張りの空間にAI生成映像が広がり、まるでバーチャルとリアルが溶け合った世界に立つような感覚を得ました。子供たちが「不思議で新しい体験だった」と目を輝かせて語る姿に、次の発想が生まれる瞬間を感じました。未来をつくる原点は、まさにこうした驚きと問いから始まるのです。

 ここで改めて考えたいのは、STEAM教育の意義です。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)に、Art(芸術・リベラルアーツ)を加えた学びは、単なる知識習得ではありません。未知の問いに向き合い、他者と協働し、創造的に答えを紡ぎ出す力を育む教育です。石黒教授が「新しい発見には芸術的センスが必要」と語ったのも、科学と芸術を横断する視点の大切さを示しています。

 けれども現実を見渡すと、教育現場には依然として多くの課題があります。AIや先端科学が進化しても、それを生かす人材を育てる教育が停滞してしまえば未来は開けません。だからこそ、教師を志す若者が夢を持てるように、そして子供たち一人ひとりが力を伸ばせるように、私たち大人が環境を整え続けることが何よりも大切なのです。

 未来は誰かが準備してくれるものではありません。技術の進化に不安を抱くのではなく、希望を持って使いこなす。その力を身につけるのは、生徒たち自身です。大阪・関西万博で見た最先端の光景は、遠い未来の話ではありません。今ここから、自分の学びと行動で未来を描いていきたいものです。