校長ブログ

部活動改革と自治体

2025.10.17 学校生活

10月17日

 公立中学校の部活動改革をめぐり、自治体の方針が分かれ始めています。国が進める「地域展開」は担い手を地域に移す構想ですが、学校に残す道を選ぶ自治体もあります。今後は受け皿確保とともに、学校の将来像をどう描くかが大きな分岐点になるでしょう。

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 神戸市は2026年に市立中学校の部活動を終了し、放課後の活動を「コベカツ」と呼ばれる地域クラブに全面移行します。野球やサッカーに加えて、ヨガやボルダリング、ドローン操縦やボードゲームなど、これまでの学校部活動では出会えなかった多彩な選択肢が用意されています。ただし、現状では約1100の部活動を受け止めるには不十分で、受け皿づくりが喫緊の課題です。

 一方、熊本市はを見送りを決め、「新しい学校部活動」を掲げました。部活の教育的意義を重視し、学校に残す道を選んだのです。合同活動や外部指導者の導入、報酬制度の整備などを通じて、従来の部活の枠を超える新たな仕組みを目指しています。

 両市に共通するのは「子どもの自己決定の尊重」「選択肢の多様化」「教員の働き方改革」です。ただし、部活動を学校教育の中に残すか否かで方向が分かれました。ここに各自治体の教育哲学が表れています。

 本校も2021年以降、放課後活動を再構築してきました。新設クラブを地域移行の仕組みに組み込み、地域人材の活用と学校教育の連動を図っています。これはまさに「地域展開」の実践例であり、学校と地域をつなぐ試みでもあります。

 さらに、本校は文科省の「DXハイスクール」にも指定されており、ICTを活用した国際的なオンライン交流や探究活動を放課後に展開しています。生徒は海外の高校生とつながりながら協働的に学びを深めることができます。こうした活動は、従来型の部活動に依存しない新しい放課後の学びを示しており、部活動改革の理念と接点を持っています。すなわち「選択肢の多様化」「生徒の自己決定」「教員の負担軽減」を同時に実現しうる仕組みです。

 今回の議論で改めて強調したいのは、部活動改革が単なる「受け皿論」にとどまらないという点です。学校は学びの場であると同時に、子供の生活基盤としての機能をどう果たすかを問われています。福祉的な役割を含めて「大きな学校」を構想する流れも見られますが、昭和型の「部活依存モデル」に戻ることは避けなければなりません。

 改革の第2幕が始まる今、自治体も学校も、それぞれの地域や校風に応じた答えを模索しています。大切なのは、どの方式を採るにせよ「子どもと教員のライフスタイルをどう変えるのか」という視点。勝利至上主義や「部活に時間を割く先生がよい先生」という評価基準を見直すことなしに、持続可能な改革はあり得ません。

 神戸市や熊本市、そして本校の実践も含め、それぞれの挑戦は全国の参考事例となるはずです。部活動を超えて、公教育の未来そのものを見据えた熟議が、今まさに求められています。