校長ブログ
英語教育を考える⑲ー音読
2025.10.03
教科研究
10月3日
音声と文字、理解と発話、そして認知と感情がつながる音読の効果は、今後、ますます重要な意味をもつことは疑う余地がありません。今回は中2生との対話から。
H:英語の授業で音読を毎日やっているのですが、正直なところ、意味があるのかなって思ってしまって...
校長:音読は地味に見えるけれど、英語力を構造的に伸ばす総合トレーニング。単に英文を読むだけではなく、脳、口、耳の回路を同時に活性化させていると言われているよ。
H:でも、リスニングや単語暗記の方が効率がよい気がするんですけど...
校長:短期的にはそう感じるかもしれないね。ただ、音読には4つの大きな効果があるよ。
H:解説をお願いします。
校長:英語を読む時、最初は語→意味→文法の順で頭が働くよね。でも、音読を繰り返すと、処理がだんだん自動化されて英語を英語のまま理解する感覚が育っていくんだ。これは認知心理学でいうチャンク化にあたるよ。
H:チャンク化って、単語をかたまりで覚えることですか?
校長:そう。慣れてくると、いちいち訳さず瞬時に処理できるようになるよ。こうした処理の土台は、まさに音読の積み重ねで養われるもの。もう一つ大事なのが音と文字の結びつきだね。英語は綴りと音が一致しにくい言語だから、目で読めるけど聞き取れない、聞こえるけど書けないといったギャップが生まれやすいんだ。音読は、そのギャップを埋める効果があるよ。
H:確かに、though、tough、thoughtとか、スペルと音がバラバラで混乱します...
校長:そういった単語も、繰り返し声に出して読むことで、綴り、発音、意味が統合的に記憶されるんだ。脳の言語野が統合的に働く状態を作る、いわば脳の英語モードへの切り替えだね。
H:スピーキングにも効くんですか?
校長:もちろん。スピーキングは「出力」だけど、音読は「準備された出力」のこと。正確な英文を音声化するトレーニングがやがて自発的発話につながっていくんだ。さらに、自分の声を耳から聞くことで、リスニング力も高まるよ。
H:自分の声が教材になるなんて面白そうです。
校長:言語習得における内的音声、つまり、頭の中の英語の声を育てる上でも、音読は決定的な役割を果たすよ。忘れてはならないのが、音読が達成感をもたらすということ。自分の声で文章を言い切ったという感覚は、自己効力感を高め、学習の継続性につながるんだ。
H:できるようになるとちょっとカッコイイかもって思える瞬間があります。
校長:その「ちょっと」が大切。人は、自分の成長を実感できたときに、最も深く学ぶことができるんだ。音読は、その「自覚ある成長」を毎日小さく積み上げる手段と言えるね。
H:少し見方が変わりました。どんなふうに音読すれば効果的ですか?
校長:理想的なのは精読+音読+暗唱。まず意味を正確にとってから、発音、抑揚、テンポを意識して読む。そして、何度も繰り返す中で、少しずつ暗唱できる部分が増えていく。それが英語を自分の言葉にするということだね。
H:わかりました。やる気が出てきました!
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