校長ブログ

外国人労働者と地域社会の未来

2025.10.07 グローバル教育

107日

 この10年、日本の地域社会は大きく姿を変えてきました。人口減少が続く一方で、人手不足を背景に外国人労働者への依存は急速に進みました。

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 厚労省の外国人雇用状況の届出状況や総務省の労働力調査をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティングが算出したデータによれば、外国人労働者の依存度は全国的に高まり、宮崎県では10年前の294人に1人から63人に1人へと4.6倍に増加しています。熊本、和歌山、青森なども大きな伸びを示しました。業種別では建設業が9.2倍、医療・福祉が8.0倍、漁業が6.6倍と急増しており、宿泊・飲食業では15人に1人、製造業でも17人に1人が外国人です。もはや農業の収穫から加工、販売に至るまで、外国人労働者は日本の供給網全体を支える存在となっています。

 こうした流れは都市部でも顕著で、東京都では14人に1人が外国人労働者です。さらに総務省の発表によれば、20241月時点で外国人住民は367万人を超え、前年比11%増と過去最多を更新しました。政府も2029年までに最大82万人の特定技能人材を受け入れる方針を示しており、家族帯同を伴う定住も拡大していくことが見込まれます。つまり、地域の学校には今後さらに多様な背景を持つ子どもたちが集い、日本の子どもたちと共に学ぶ日常が当たり前になっていくでしょう。

 この現実を「前向きな力」に変えるためには、教育の果たす役割が極めて大きいと言えます。外国人を単なる労働力として受け入れるのではなく、「共に地域を築く仲間」として迎えるために、学校こそが社会の架け橋となるべきだからです。

 本校でもその可能性を日々実感しています。海外の学校とのオンライン協働学習を積極的に進め、アジアや欧州の中高生と英語で社会課題や文化について語り合う中で、生徒たちは「違い」を障壁ではなく「学びの資源」として捉える力を育んでいます。ICTを活用したこうした実践は、DXハイスクールとしての特色であると同時に、多文化共生社会の縮図とも言えるでしょう。

 また、外国にルーツを持つ生徒が加わることで、授業の風景そのものが変化します。教室で多様な視点が共有されると、日本の子どもたちも自らの価値観を相対化し、新たな気づきを得ます。これは特別なプログラム以上に大切な「日常の学び」です。さらに、子どもたちが学校を通じて友人関係を築き、地域に根を下ろすことで、その家族も地域社会に溶け込みやすくなります。教育はまさに地域における共生の出発点なのです。

 外国人労働者の増加は避けられない現実です。しかし、それを単なる労働力の問題としてではなく、「共に未来を描く問い」として受け止めるとき、教育の可能性が一層鮮明になります。人口減少時代だからこそ、教育は社会の持続可能性を支える基盤となるのです。