校長ブログ
英語教育を考える⑳ー英文学の勧めと多読
2025.10.08
教科研究
10月8日
辞書を引かずに、やさしい英文をたくさん読むのが多読。ポイントは、わからない単語があっても止まらないこと。繰り返すうちに、意味のかたまりで捉える力が自然と養われ、量が質に変わるのです。
![]() 生徒Y:英語って結局、文法と単語を覚えればいいんですよね?
校長:それだけでは英語を学ぶことにはなっても、英語で"考える"ことにはなりにくいよ。
生徒Y:英語で"考える"って、どういうことですか?
校長:例えば、O. ヘンリーの短編『賢者の贈り物(The Gift of the Magi)』を読んでごらん。英語そのものは平易だけれど、夫婦がお互いのためにすべてを差し出す姿に、読み手は幸福とは何かを考えさせられるはずだよ。それは、言語の壁を超えて心に届く物語の力だね。
生徒Y:え、それって、感動系なんですか?
校長:そう、そして同時に"ひねり"がある。O. ヘンリーの特徴は、シンプルな英語で人間の深さを描き、予想外の結末で思考を揺さぶること。だからこそ、多読の教材としてもとても優れているんだ。
生徒Y:でも、英文学って、ちょっと敷居が高く感じます...
校長:だからこそ、やさしい英語で深い世界を描く作家が、多読の入口にぴったりなんだよ。日常の中にある人間ドラマを通して、共感する力や考える力を育ててくれるからね。
生徒Y:共感する力って、英語の勉強と関係あるんですか?
校長:とても。例えば、アメリカ社会で生きる庶民の姿を描いたO. ヘンリーの短編には、その時代の価値観や文化が自然と表れているよ。英語を覚えるのではなく、英語で人間を理解する力をつけることこそ、本質的な語学力なんだ。
生徒Y:でも、どうやって多読を始めたらいいのか分からないです...
校長:まずは、レベル別にやさしく編集された多読教材から始めるのがコツだね。"Penguin Readers"には、O. ヘンリーの短編がレベル1から用意されているよ。辞書を引かない、途中で止まらないというルールで、少しずつ読む量を増やしてみてはどうかな?
生徒Y:短編なら、集中力が続きそうです。
校長:その通り。1話10分、でもその10分が、言葉と人間とをつなぐ深い時間になるんだ。気づけば英語の語感も、読解力も、そして思考力も身についていくはずだよ。大切にしてほしいのは、「読む」という行為が、自分自身と対話する時間であるということ。短編を読む時間はわずかでも、そこには感情の揺れや価値観の転換が潜んでいる。登場人物の気持ちに寄り添いながら、自分だったらどうするかと考える。それは、まさにリフレクションであり、これからの時代を生きる対話力の土台になるんじゃないかな。
生徒Y:ちょっと...読んでみたくなってきました!
校長:それでこそ、学びが始まった証拠だね。短編を読むことで、誰かの苦悩に共感し、小さな優しさに感動できる―そんな体験が、英語で人間を理解する力へとつながっていくんだ。英文学は、自分自身を映し出す「鏡」であり、世界を覗く「窓」でもあるからね。
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