校長ブログ
英語教育を考える㉑ー精読と速読の使い分け
2025.10.15
教科研究
10月15日
「精読と速読はどう違うのですか?」「どちらを優先して学べばよいのですか?」という質問をよく受けます。英語の読解力を伸ばそうとする人にとって、このテーマは避けて通れないものです。今回は、その勉強法と使い分けについて考えてみましょう。
|
生徒:英語を読むときに精読と速読という言葉をよく聞きます。どちらも大事だと思うのですが、どう使い分ければよいのでしょうか?
校長:精読と速読は、実は対立するものではなく補完関係にあるんだ。精読は文章の構造や意味を丁寧に理解する学習、速読は文章の流れをつかむ実践、と考えるとよいよ。どちらか一方だけでは英語力は伸びにくいんだ。
生徒:精読というのは、単語を全部辞書で調べることだと思っていました。
校長:精読は単に辞書を引く作業ではないよ。文構造を正確に理解するトレーニング。英語は語順で意味を作る言語だから、主語・動詞・修飾の関係を丁寧に追い、どの語がどの語を支えているのかを意識することが大切なんだ。関係代名詞や分詞構文などを見落とすと、意味は大きく崩れてしまう。精読とは、そうした落とし穴を避けながら、正確な理解を積み上げていく作業なんだよ。
生徒:なるほど、文を解剖するような感じですね。では速読はどう違うのですか?
校長:速読は意味のカタマリを前から処理していく練習だね。日本語に訳さず、文頭からイメージを思い浮かべながら読み進める。脳に余計な負荷をかけず、文脈を手がかりに内容をつかむことがコツ。ここで大事なのは、精読で培った文法知識があって初めて速読が成り立つということ。つまり速読は、精読の正確さを土台にした速度の訓練なんだよ。
生徒:どちらを先に学ぶべきですか?
校長:順序で言えば、まずは精読だね。基礎的な文法知識と構造把握力がなければ、速読はただの「飛ばし読み」になってしまう。中高生の段階では、教科書や入試問題を使って一文一文を正確に理解する練習が不可欠だ。その上で、英文記事や小説などで速読に挑戦すると、理解の幅が一気に広がるよ。
生徒:でも試験では時間が足りないので、速読が必要だと思います。
校長:その通り。試験や資格試験では限られた時間で大量の情報を処理する力が求められる。だから学習のプロセスとしては、精読で基盤を固め、そのうえで速読で処理速度を高める。この二段階が望ましいね。さらに言えば、精読と速読を並行して練習するのが理想だ。例えば、平日は精読、休日は速読といったリズムをつくるのも効果的だよ。
生徒:普段の勉強ではどう組み合わせたらよいですか?
校長:おすすめは Dual Reading Approach だ。まず一つの英文を精読し、構造を完全に理解する。その後、同じ文章を時間を計って速読する。これによって正確さと速さを同時に鍛えることができるんだ。精読で得た知識を速読に活かすサイクルを回すことで、読解力は確実に伸びていくよ。
生徒:なるほど、精読と速読は対立するものではなく、支え合うものなのですね。
校長:そう。精読は顕微鏡、速読は望遠鏡のようなもの。顕微鏡で細部を理解し、望遠鏡で全体像をつかむ。この両方がそろって初めて、英語を自在に使いこなせるようになるんだ。
生徒:学習アドバイスをお願いします。
校長:まずは精読で基礎を固めよう。一文ごとに主語はどれか、修飾はどこにかかるかを確認する習慣をつけること。その上で速読は量と慣れ。ニュース記事や短編小説を使って、辞書を引かずに意味をつかむ練習を続けるとよい。そして同じ教材を精読と速読の両方に使い、理解の深さとスピードを結びつけていくことを勧めるよ。
生徒:そんなやり方があったんですね。頑張ります。
校長:精読で正確に、速読で流れるように。この二つを車の両輪のように回していけば、必ず読解力は伸びる。学問的な研究の場でも、国際的な実用の場でも、その力は必ず役に立つはずだよ。
|