校長ブログ
英語教育を考える㉓ースキャニングとスキミング
2025.10.25
教科研究
10月25日
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生徒N:長文読解でいつも時間切れになってしまいます。最後の設問までたどりつけないんです。
校長:よくある悩みだね。大学受験の英語長文は、全部を精読しようとすると必ず時間が足りなくなるんだ。そこで有効なのがスキャニングとスキミングだよ。
生徒N:スキャニングって、どういう読み方ですか?
校長:スキャニングは"情報検索読み"と言われるもの。キーワードや数字、固有名詞などを視覚的に素早く拾い出す読み方だね。認知心理学では"visual search process"と呼ばれていて、情報を網の目のように捉え、必要なところだけを効率的に選び取る力なんだ。例えば、According to paragraph 3...と問われたら、第三段落に絞って情報を探せばよい。新聞で天気欄だけを見るのと同じ発想だよ。受験対策では、不要な部分を読まない勇気が得点を左右するんだ。
生徒N:なるほど。では、スキミングは?
校長:スキミングは"流し読み"で、文章全体の大意をつかむ読み方だね。段落冒頭や接続詞に注意すると、論理展開が見えてくる。第二言語習得研究では"top-down processing"と呼ばれていて、背景知識や予測を活かすことで全体の意味の枠組みをつかめる。受験長文では設問の位置づけや筆者の主張を理解するために欠かせない読み方なんだ。
生徒N:全体像がわかれば、細かい設問も答えやすくなりますね。
校長:その通り。スキャニングがポイントを探す行為だとすれば、スキミングは地図を描くような行為だよ。両方があって初めて読解力がアップするんだ。だから指導ではまず本文をスキミングして段落ごとに要点を一言でまとめる。その後、設問を確認して、関連するキーワードを意識しながら本文をスキャニングする。そして必要な部分を精読して答えを確定する。この流れは"interactive model"に基づく方法で、トップダウンとボトムアップを相互に作用させることで読解効率が飛躍的に高まるんだ。
生徒N:でも、結局テクニックにすぎないんじゃないですか?
校長:よい質問だね。実はそうではないんだ。大学に入れば専門書や論文を読むことになるけれど、すべてを精読するのは現実的ではない。社会に出ても同じだよ。限られた時間で本質をつかむ力は、一生にわたって役立つ"学び方の力"なんだ。例えば、最近読んだ英文記事を30秒でスキミングして「筆者の主張は何か?」を一文でまとめてみる。そして、自分で設問を一つ作り、本文をスキャニングして答えを探す。このような小さなトレーニングを繰り返すだけで、読解のスピードと正確さは確実に変わってくるよ。受験対策は点数を取るためだけのものではなく、"学び方を学ぶ場"でもあるんだ。スキャニングとスキミング、その二つをぜひ日常の読書にも取り入れてみてほしいな。
生徒N:はい、今日から挑戦してみます!
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