校長ブログ
英語教育を考える㉔ーシャドーイング
2025.10.28
教科研究
10月28日
シャドーイングは単なる音声訓練ではなく、理解・発話・協働をつなぐ総合的な学習活動へと発展しつつあります。研究成果を土台に、教師の創意工夫によって授業は確実に変わります。
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A先生:SLA(第二言語習得研究)でも、シャドーイングの有効性が改めて注目されていますね。音声知覚の自動化やワーキングメモリの活性化につながるという報告もありました。
校長:私もいくつかの論文を読んだよ。音声を聴いた直後に声に出して再現することで、理解と発話が同時に働く。特に、リスニング力とプロソディの習得に効果があることが示されているね。これは単に「聞けるかどうか」ではなく、処理の深さを伴う学習になるよ。
A先生:そうなんです。これまでリスニングは聞き取れるかどうかに偏りがちでしたが、シャドーイングでは聞いて即座に再現するので、処理の深さがまったく違うと思います。実際に授業で取り入れてみると、生徒の集中度も上がります。
校長:具体的には、どのように授業に組み込んでいるの?
A先生:まずは10分間のウォームアップ・シャドーイングを設定しています。短めの教材を使い、教師と一緒に、次にペアで交代しながら、最後は一人で、と段階を踏みます。研究では逐語的に追いかけるよりも、意味のまとまりを意識して声に出す方が効果的とありますので、その点を指導のポイントにしています。
校長:なるほど。単なる音声模倣で終わらせず、意味理解と統合を促すわけだね。生徒の反応はどう?
A先生:最初は難しいという声もありました。ただ、継続するうちにリスニングが楽になった、発音が自然になった、というコメントが増えてきました。特に、英語に苦手意識を持っていた生徒ほど、「できる実感」を得やすいのが印象的です。
校長:重要な視点だね。学習意欲や自己効力感を高める実践は、学校全体の英語力を押し上げる原動力になるよ。ICTの活用とはどのように結びつけているの?
A先生:タブレット端末で音声を個別に再生し、生徒は自分の声を録音して振り返ります。AIの音声認識を用いれば発音のフィードバックも得られるので、教師の指導と組み合わせて効率が高まります。さらにペア活動では互いの録音を聞き合い、良い点を指摘し合う協働型シャドーイングを取り入れています。
校長:よい取り組みだね。シャドーイングは本来、個人練習の印象が強いけれど、仲間と確認し合うことでメタ認知が促進される。学習の社会的な側面を取り込んでいる点に価値があるよ。
A先生:さらに、研究では内容理解を伴うシャドーイングの有効性も報告されています。そこで、リーディング教材と組み合わせて、意味理解 → 音声再現 → 内容要約という流れをつくりました。これにより、生徒は聞ける・話せるだけでなく、理解したことを自分の言葉で再構築する力を養えます。
校長:まさにカリキュラム・マネジメントの視点であり、技能を分断せず、聞く・話す・読む・書くを統合的に伸ばす仕組みになっているね。言語活動の往還を通じて、学びを有機的に接続することができるよ。
A先生:ありがとうございます。今後は他教科との連携も視野に入れたいです。例えば、社会科の英文資料を素材にシャドーイングを行えば、内容学習と英語学習の両立が可能になると思います。
校長:英語教育を言語スキルに閉じず、知識の習得や批判的思考と結びつけることが大切。まさに教科横断的な学びの一つのモデルになるね。研究知見を基盤にしつつ、現場で創意工夫を重ねること。それを学校全体で共有し、継続的に発展させていきたいね。
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