校長ブログ
市民マラソン
2025.10.23
トレンド情報
12月5日
長く続いた猛暑がようやく過ぎ去り、各地で「市民マラソン」の季節がやってきました。今年は大会エントリーの動きが全国で活発化しています。
近年、この市民マラソンをめぐる動きに新たな息吹を感じます。2024年の大会エントリー数は全国で210万件に達し、コロナ禍前の95%まで回復したとのこと。2025年には、いよいよコロナ前の水準を超える見通しだそうです。かつての賑わいを取り戻すだけでなく、体験を通じて人とつながりたいという新しい世代の価値観が、走る人々の輪を広げているのではないでしょうか?
興味深いのは、若者の参加が急増していることです。20代の新規登録者は2019年比で約1.5倍。仲間とともに走り、身体を使って挑戦し、ゴールで感動を分かち合うといったリアルな体験が、デジタル中心の時代にあって、むしろ人と人とをつなぐ「コミュニケーションの場」になっているように思います。私たちが教育の現場で重視する共感的な学びや協働の経験とも、どこか通じるものを感じます。
一方で、課題も見えてきます。ボランティア不足や人件費の上昇により、参加費は軒並み上がっています。平均参加料は8,000円、東京マラソンではついに2万円近くに。初回大会から倍額となりました。しかし、こうした経済的負担にもかかわらず、多くのランナーが再びスタートラインに立とうとしている姿は、人の「生きたい」「挑戦したい」という根源的なエネルギーを映しているようです。
さらに、海外からのランナーの姿も目立ちます。香港、台湾、タイなど、アジアの各国・地域からの参加者が増え、日本の大会が国際的な交流の場となりつつあります。単なるスポーツイベントを超え、異文化が交わり、言葉を超えた「共走」の瞬間が生まれている。そこには、教育にも通じる大切な示唆があります。
走ることは、単に速さを競うものではなく、自らの限界と向き合い、他者と支え合いながら前へ進む行為です。教育もまた、個々の成長と協働を通して「よりよく生きる力」を育てる営みだとすれば、市民マラソンの広がりは、現代社会における学びの在り方を映し出しているのかもしれません。
季節は巡り、人々は再び走り出します。スタートラインに立つ一人ひとりの姿には希望が感じられます。大切なのは、タイムではなく、走りながら出会う「自分」と「他者」とのつながり。その歩みを、私たちもまた、教育という道の中で共に続けていきたいと思います。