校長ブログ

AIとゲーム、そして教育 ― 共通する創造性の課題

2025.11.01 EdTech教育

11月1日

 AIの進化は、教育や産業界にとどまらず、エンターテインメントの世界にも大きな変化をもたらしています。特にゲーム業界では、キャラクターやシステムの生成といった創造的な領域にまでAIが活用され、従来の「誰もが同じ体験をする」枠を超えて、一人ひとりに異なる体験を届ける取り組みが始まっています。

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 例えば、コロプラの「神魔狩りのツクヨミ」では、カードのイラストを生成AIが自動的に描き、プレーヤーごとに異なる世界を体験できる仕組みになっています。これは「枠を設けながらも多様性を広げる」という意味で、教育におけるカリキュラム・マネジメントに通じるものがあります。また、ドリコムの「はらぺこミーム」では、キャラクターごとにAIを搭載し、それぞれが学習を通じて個性を形成します。教師が全てを決めるのではなく、子ども自身の探究や表現を尊重することで、予測不能な個性が輝く瞬間があるのです。

 もちろん、課題もあります。AIは制御が難しく、ゲームバランスを崩す危険や、著作権・炎上リスクが伴います。そのため企業は多くの場合、人間が最終的に修正を加え、創作性を担保しています。AIは人間を置き換えるのではなく、人間の創造を支える道具として活用されているのです。

 これは教育現場にもそのまま当てはまります。本校でもAIを使った教材開発や英語学習支援を試行していますが、そのままでは不十分です。教師が意図を持って補正し、生徒に合った形に調整することで初めて意味を持ちます。英語イマージョン授業にAI翻訳を組み込んでみると、生徒たちはAIの誤訳や不自然さに気づき、かえって主体的に表現を工夫する姿を見せてくれます。ここにこそAIと人間の共創の本質があります。

 さらに、MIXIの「モンスターストライク」では、AIが下絵を描き、デザイナーが仕上げる仕組みを導入しています。AIの提案がむしろ人間の創造意欲を刺激するというのです。これは、教師にとっても同じです。AIが提示する素材や分析結果を活かしながら、最後に人間が「教育的意義」を与える。そこに教師の専門性が発揮されるのです。

 ゲームがスマートフォンやVRを取り込み進化してきたように、教育もまたAIを避けては通れません。大切なのは「AIで何をするか」ではなく、「AIをどう人間の成長につなげるか」です。ゲーム業界の挑戦は、教育現場に多くの示唆を与えてくれます。AIを道具として賢く活かし、生徒たちの創造力をさらに解き放つことこそが、次代を切り拓く大きな資金石になると確信しています。