校長ブログ
日本人の減少と外国人への労働力依存
2025.11.13
教科研究
11月13日
総務省から住民基本台帳に基づく人口統計が公表されました。日本人の人口は16年連続で減少し、今年は過去最大となる90万人超の減少幅となりました。出生数は過去最少を更新し、死亡数との差は拡大しています。2009年のピークから数えると、日本人の人口は640万人以上減少しており、まさに少子高齢化の現実が数字となって突きつけられています。
一方で、外国人人口は全国で初めて350万人を超え、すべての都道府県で増加が確認されました。都市部に限らず、造船業の今治市、農業の北海道剣淵町、製糖業の沖縄県粟国村など、地方の基幹産業を支える存在としても不可欠になっています。日本社会はすでに多文化共生を前提とせざるを得ない段階に入ったと言えるでしょう。
こうした数字や事例が示すのは、外国人を単なる労働力としてではなく、地域を共につくる仲間として受け止める視点の必要性です。今治市の「多文化・共生社会推進室」や川口市の多言語対応の取り組みは、その先駆けと言えます。
教育の現場に身を置く者として、この変化を特に強く意識します。教室にはすでに多様な文化的背景を持つ生徒が共に学んでいます。言葉の壁、生活習慣や文化の違い、日常生活における不安―それらをどう支え、日本人の子どもたちにとっても「違い」を理解し共に歩む力を育むのか?これは学校教育の重要な使命です。学校は未来社会を映す鏡です。もし学校が多文化共生を実現できれば、社会全体の姿も自ずと変わっていくはずです。
本校でも、多文化協働共生の実践を重ねています。ICTを活用した海外校との協働学習では、日本の生徒と海外の生徒が同じテーマに取り組み、互いの発想や表現を共有します。英語による議論を通じて、自分の意見を伝える力だけでなく、異なる視点を尊重する姿勢が育まれています。また、外国にルーツを持つ生徒が校内に在籍することで、日常の会話や学校行事を通じて自然に多様性に触れる機会も生まれています。
こうした実践を通じて感じるのは、多文化共生は特別なものではなく、日常の中で少しずつ育まれるということです。地域社会でも学校でも、異なる背景を持つ人と共に生きることは、これからの日本に不可欠です。だからこそ教育は、生徒たちに違いを恐れるのではなく、違いから学び合う力を身につけさせる場であるべきだと考えます。
人口減少は社会にとって大きな危機であると同時に、新しい社会のあり方を考える契機でもあります。教育が率先して多文化共生を実現し、未来社会のモデルとなることが求められています。数字が示す厳しい現実を直視しながら、そこから希望を紡ぎ出す。そのために教育が橋渡しの役割を果たせるよう、これからも現場で挑戦を続けていきたいと思います。