校長ブログ

次期学習指導要領とルール作りが示すもの

2025.11.03 カリキュラム・マネジメント

113日

 中央教育審議会の特別部会で、次期学習指導要領の論点整理案が了承されました。学習指導要領は、小中高校における教育の基準であり、約10年に1度改訂されます。次期指導要領は、2030年度ごろから順次実施される見通しです。

 大きな柱の一つは、授業時数を柔軟に調整できる「調整授業時数制度」です。従来の一律的な時数配分ではなく、学校ごとの特色や子どもの学びの実態に応じてカリキュラムを編成できる仕組みが導入されようとしています。探究活動や教員研修に時間を振り向けられる点は、現場にとって大きな可能性を開くものです。

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 注目すべきもう一つの点は、「ギフテッド」や不登校の子どもに向けた個別カリキュラム制度の新設です。学びの多様化に真正面から取り組む姿勢が示されています。また、情報活用能力の強化として、中学校では技術・家庭科を分離し、情報分野を「情報・技術科(仮称)」として扱う方針も示されました。AIDXが進展する社会を見据えれば、情報リテラシーの育成は不可避の課題です。中教審は今後、各教科やテーマ別の作業部会を立ち上げ、詳細な議論を進め、2026年度中の答申を目指しています。

 一方、文科省は主権者教育にも新たな一手を打とうとしています。選挙権年齢が18歳に引き下げられて10年が経ちましたが、若者の投票率は依然として低迷しています。その背景には、政治や社会を「自分ごと」として実感できる機会の乏しさがあります。そこで注目されているのが「ルール作り」の実践です。校則や学級のルールを生徒自身が議論し、合意形成していく取り組みは、まさに民主主義の縮図と言えるでしょう。

 実際、つくば市の小学校では、池の周りの安全な利用方法を子どもたちが話し合い、「歩こう」というルールを自分たちで決定しました。自分の声が学校を変えるという経験は、主権者意識を育む確かな土壌となります。

 日々の学校経営の中で、カリキュラム・マネジメントの本質は、生徒が自分の学びを主体的に位置づけられる環境を整えることにあると感じています。今回の指導要領改訂の方向性や、ルール作りを通じた主権者教育は、その理念と響き合うものです。

 勿論、これらを実効性あるものにするためには、教員の意識改革が欠かせません。教科指導にとどまらず、学校でのあらゆる営みが社会や政治と結びついていることを、教師自身が理解しなければならないのです。

 次期指導要領は2030年度から本格実施される予定ですが、すでに全国でモデル事業が始まっています。未来を担う子どもたちが「自分の学び」「自分の社会」を創り出す主体であると実感できるよう、教育現場の挑戦も続いていきます。