校長ブログ

ロボットが社会を変える時代だからこそ...

2025.11.05 トレンド情報

11月5日

 4月下旬、上海で先端技術の開発者会議が開催され、その模様が注目を集めました。会場では、自動車工場を模した展示ブースで二足歩行型ロボットが部品箱を運ぶ様子が披露され、来場者の関心を集めました。その動作の滑らかさは、まさに「人間の代わり」を思わせるものでした。

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 このロボット「KUAVO(クアボ)」は、中国のスタートアップ企業によって開発され、すでに高級車ブランド「紅旗」の工場に試験導入されています。制御にはファーウェイの生成AI「盤古(パングー)」が使われており、人間の体を模しながら現実世界に働きかける「フィジカルAI」の可能性を大きく示すものでした。

 思い起こせば、20世紀初頭にヘンリー・フォードが導入したコンベヤー方式は、自動車の大量生産を可能にし、消費社会を広げる大きな転換点となりました。100年経った今、同じ工場の現場でロボットが人間に代わる転換が進もうとしています。テスラのイーロン・マスク氏は、ヒト型ロボットの普及台数は100億台を超えることを予測し、自ら「オプティマス」の開発を進めています。

 こうした動きは同時に、激しい国際競争の一部でもあります。中国は「中国製造2025」戦略を掲げ、EVやドローンに続いてヒト型ロボ市場でも世界の主導権を握ろうとしています。2025年には北京で「ロボット五輪」が開催される予定で、国家を挙げた技術革新の推進が見て取れます。20世紀の米ソ冷戦が宇宙開発を競ったように、現代の米中はAIとロボットの分野で新たな冷戦構造を形成しつつあるのです。

 教育現場はこの変化をどう受け止めるべきでしょうか?もし工場労働の多くがロボットに代替される未来が来るなら、子どもたちに必要なのは単純な知識や作業のスキルではありません。むしろ、人間ならではの創造力、仲間と協働する力、そして複雑な状況で倫理的に判断する力こそが求められます。AIやロボットが高度化するほど、人間らしさを育てる教育の重要性は増していくのです。

 日々の教育活動を通じて感じるのは、生徒たちが持つ柔軟な発想や、仲間と共に挑戦し解決策を見い出す力の大切さです。テクノロジーは進化し続けますが、それをどう使い、どう社会に活かすかを考えるのは人間の役割に他なりません。だからこそ学校教育は、AIと共生する社会にふさわしい力を意識的に育む場であるべきだと考えます。

 上海で披露されたロボットは、未来社会の姿を象徴するものでした。しかし同時に、それは教育に携わる者に人を育てる営みの意義を改めて問いかける存在でもありました。ロボットが社会を変える時代だからこそ、人間を育てる教育の価値はいっそう大きくなっているのです。