校長ブログ

観点別評価の見直し

2025.11.14 カリキュラム・マネジメント

11月14日

 高校教員を対象とする観点別評価に関するアンケートが公開されています。(『Guideline』河合塾)。次期学習指導要領の検討が進む中で、「主体的に学習に取り組む態度」を評定に反映させない方向性が示されたことを受け、現場の教員がどのように感じているのかを尋ねたものです。全国158名の回答から見えてくるのは、この3年間の実践の中で、多くの教員が観点別評価の意義を理解しながらも、その運用に大きな課題を感じているという現実です。

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 アンケートによると、9割の教員が「観点別評価に課題を感じる」と回答しています。評価が「うまくいった」と感じている教員の中でも8割以上が課題を挙げており、現行制度に対する複雑な受け止めが浮かび上がっています。自由記述では、主観的になりがち、5段階で示すことの難しさ、学校間でのばらつきといった声が多く、評価基準の統一や信頼性の確保に苦慮している様子がうかがえます。さらに、大学に進学する資料としての妥当性への疑問や、育成的評価としての手ごたえの薄さを指摘する声も見られました。

 一方で、次期学習指導要領での見直し方針には、8割以上の教員が賛成しています。主体性を数値化することの難しさや公平・公正な評価への懸念に加え、まずは教員の業務負担を減らすべきという現場の声が背景にあるようです。ただし、反対意見の中には、「主体性の育成を軽視すべきではない」「うまくいかないからと撤回するのではなく、評価方法を改善すべきだ」といった建設的な提案も寄せられています。制度の是非を問うだけでなく、教育の目的そのものを見つめ直す機会として受け止めることが大切です。

 観点別評価の導入は、生徒一人ひとりの学びのプロセスを丁寧に見取り、成長を支える意義深い仕組みです。しかし、評価が制度的に整っていなければ、教師も生徒も本来の学びの目的を見失ってしまうおそれがあります。重要なのは、評定の有無ではなく、「学びに向かう力」や「人間性」をどのように育み、「知識・技能」「思考・判断・表現」とどのように言語化し、可視化していくかという教育の本質的な問いです。

 今後、中央教育審議会での議論が進む中で、評価の形式を超えて、生徒の学びを支える対話的で育成的な評価文化が再定義されることを期待しています。教師の専門性を生かしつつ、現場の負担を軽減し、子どもたちの成長を実感できる新しい評価の在り方を、共に描いていく必要があるのです。