校長ブログ
多文化共生に向けての移民政策
2025.11.24
トレンド情報
11月24日
外国人の増加が加速する中で、日本社会は新たな転換点を迎えています。政府は、「一定規模の外国人や家族を期限なく受け入れて国家を維持する、いわゆる移民政策はとらない」と説明していますが、実態としては、全体の受け入れ目標や上限はなく、受け入れを拡大しています。しかし、明確な将来像が定まらないまま、省庁や自治体がそれぞれに取り組む現状は、教育現場にも新しい課題を投げかけているとも言われています。
全国知事会は7月、「多文化共生施策の根幹となる基本法」と「司令塔となる組織」の創設を求める提言を提出しました。日本語教育や相談体制の財源が不足し、地方の現場では支援が善意やボランティアに支えられているのが現状です。教育の世界でも、外国にルーツをもつ子どもたちが十分に学びの機会を得られず、支援が地域によって差が出ていることが指摘されています。
2018年の入管法改正により「特定技能」制度が導入され、外国人労働者は2024年末には230万人を超えました。今や社会の様々な分野で外国人の力が欠かせない存在となっています。こうした中で、国としてもより長期的な視点から受け入れと共生のあり方を考えることが求められています。
一方、海外では明確な理念のもとに制度設計が進んでいます。カナダでは移民・難民・市民権省(IRCC)が政策を一元的に担い、語学力や専門性を重視したポイント制を採用しています。シンガポールは経済戦略と連動した人材政策を展開し、韓国では言語教育や家族支援まで包括的に行っています。いずれの国も、「多様性を国の力ととらえる視点」を持っていることが特徴です。
日本でも、2022年に「共生社会実現ロードマップ」が策定され、様々な分野で取り組みが始まっています。まだ道半ばではありますが、国・自治体・教育現場が協力しながら、より実効性のある仕組みを整えていくことが大切です。
教育の立場から見れば、移民政策は単なる労働政策ではなく、「人づくりの国家戦略」です。異なる文化をもつ子どもたちが共に学び、互いの価値観を尊重する経験は、次の時代を担う大きな力となります。多文化共生とは"共に生きる"だけでなく、"共に育つ"ことです。
国が明確な理念を掲げ、教育と連動した形で共生社会を築いていく時、そこには新しい学びと成長の可能性が生まれます。多様性を受け入れる社会とは、人の違いを認め合い、そこから学び合う社会です。今こそ、教育の力を通して、日本がより豊かで開かれた国へと歩んでいく時だと感じています。