校長ブログ
生成AI時代の学びの耐性
2025.12.08
カリキュラム・マネジメント
12月8日
生成AIの進化は、教育現場の在り方そのものを問い直しています。AIが文章を書き、問題を解き、知識を自在に検索する時代。では、「学ぶ力」をどう育てていけばよいのか。これは、単に技術への対応ではなく、教育の根幹を見つめ直す問いです。
文科省が今年度に実施した「経年変化分析調査」では、ほぼすべての教科で平均スコアが下がるという結果が示されました。特に社会経済的背景(SES)の低い子どもたちの学力低下が目立ちます。教育の機会均等を支えてきた日本の強みが、いま揺らぎ始めているのです。
しかし、同じデータから「主体的・対話的で深い学び」に取り組む子どもたちは、SESが低くても高い成果を上げているという光も見えています。つまり、学校という場で教師が伴走し、子どもが自分の言葉で考え、友と対話しながら学ぶときこそ本当の学力が育つのです。
このことは、ICTや生成AIの活用にも通じます。家庭でのスマホ時間が学力と負の相関を示す一方で、学校でのICT活用が学力と正の相関を示すというデータ。つまり「どこで、誰と、何のために使うか」が決定的に重要なのです。AIは教師を置き換えるものではなく、教師の専門性をより発揮させるツールであるべきだと考えます。
次期学習指導要領の改訂では、「内容の精選」と「概念の定着」がキーワードになります。例えば、分数や関数といった数学的概念を「理解したつもり」で終わらせないために、学び直しや柔軟なカリキュラム運用を可能にする「調整授業時数制度」が導入される見込み。評価の仕組みも、子どもの成長の時間軸に合わせて変えていく必要があるでしょう。
また、情報教育の強化は避けて通れません。AIやデジタル技術の進化はあまりに速く、教科書の記述が数年で陳腐化してしまう。だからこそ、「骨格は堅固に、内容はしなやかに」。時代の変化を吸収できるカリキュラム・マネジメントこそが、学校の生命線になります。
そしてもう一つ。社会が急速に変化する今こそ、子どもたちの内に「学びのエンジン」を育てたいと思います。自ら問い、考え、学び続ける力。学びを人生の喜びとして捉え直す感性。それがあれば、どんな時代にも立ち向かうことができる。
生成AIの時代に求められるのは、「知識の量」ではなく、「学びの耐性」です。変化に振り回されず、変化を自らの成長に変えていける力。その出発点にこそ、学校教育の真価が問われていると感じます。