校長ブログ

英語教育を考える㉜ーディクテーション

2025.12.06 教科研究

12月6日

今回は、大学生と若手教員とのディクテーションに関する対話からです。

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学生:英語の授業でやるディクテーションなんですが、聞き取れなくて落ち込むことも多いし、ただの古い練習法って気がして...

校長:そう思うのも自然だよ。でもね、ディクテーションは単なる聞き取りテストじゃないんだ。実は第二言語習得の研究で再評価されていて、リスニング力と書く力を同時に伸ばす仕組みを持っているんだよ。

学生:同時に、ですか?

校長:そう。音を聞いて短期記憶に留めるだろう、その後、音韻を処理して意味をつかむ。そして正しい綴りに置き換える。この一連の流れは、リスニングのボトムアップ処理とトップダウン処理を同時に鍛える訓練になるんだ。だからただの書き取りじゃなくて、複合的な学習なんだよ。

教員:なるほど。研究でも効果は実証されているんでしょうか?

校長:例えば、 Kiany & Shiramiry の研究では、ディクテーションが語彙定着や文法の正確さを高めると報告されている。Nation も、これは「フォーカス・オン・フォーム」の一形態として評価しているんだ。つまり、リスニングだけじゃなく、言語習得全体に影響を与えるってことなんだよ。

学生:でもやっぱり難しいし、すぐに自信をなくしちゃいます...

校長:よく分かるよ。ディクテーションは認知的負荷が大きいから、学習者にストレスを与えることもあるんだ。でも Vandergrift & Goh は、メタ認知的アプローチが効果的だと述べている。つまり「どこをどう聞き取ろうとしたのか」「どんな方略を使ったのか」を振り返ることで、失敗を単なる挫折じゃなくて学習の糧にできるんだよ。

教員:実際の授業では、どんなふうに取り入れていれたらよいでしょうか?

校長:以前、中学校で週に一度、短いディクテーションをやっていたんだ。そうしたらスペリングが正確になっただけじゃなく、リスニングのテストも点数が上がった。生徒の感想には「英文をかたまりで捉えられるようになった」とか「聞き逃しても推測できるようになった」って書かれていたよ。つまり、技術だけじゃなくて学習者の意識も変わったってことなんだ。

学生:そう聞くと、ちょっと見方が変わってきます。

校長:そして今の時代はICTとも結びつけられる。AIの音声認識や自動フィードバックを活用すれば、自分の弱点をすぐに把握できるんだ。伝統的な方法とデジタルを掛け合わせることで、新しい学習の形が生まれるんだよ。

教員:なるほど。昔からの方法を、現代の環境に合うように再設計できるわけですね。

校長:そういうことだね。だからディクテーションは古いから不要じゃなくて、今の教育デザインの中にどう組み込むかが大事なんだ。科学的な根拠もあるし、実践の成果もある。だからこそ、価値ある活動なんだよ。

学生:分かりました。次の授業では「どう聞いたか」を意識して、もう一度挑戦してみます。

校長:その姿勢が一番大切だよ。ディクテーションは、自分の学び方を見直すきっかけになるからね。