校長ブログ

温暖化

2025.12.26 教科研究

12月26日

 この夏も記録的な暑さが続きました。セ氏40度を超えても驚かなくなった現実は、もはや「異常気象」ではなく「新常態」と言うべきかもしれません。洪水や山火事といった災害も世界各地で頻発し、人間がもたらした地球温暖化の影響が年々深刻さを増しています。

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 今から四半世紀前、京都で開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)で「京都議定書」が採択されました。当時、日本は環境問題の最前線に立ち、国際社会の信頼を得ていました。工業化を進めながら公害を克服した経験を持つ日本が、温暖化対策でも主導的役割を果たせるという自負があったのです。

 1970年代のオイルショック後、日本は「枯渇しないクリーンなエネルギー」を掲げ、再生可能エネルギー技術の開発に挑みました。太陽光パネルの生産では世界をリードした時期もありました。しかしその後、国内市場の整備が遅れ、中国や欧州に追い越されました。先見の明を持って始めた取り組みが、継続的な投資と政策支援を欠いたために実を結ばなかったのです。ここには、短期的利益に流されやすい日本社会の構造的課題も見えてきます。

 一方で、温暖化の科学的根拠を確立したのは日本人研究者でした。1967年、真鍋淑郎博士は「大気中のCO₂が2倍になれば地上の気温が2.36度上昇する」と予測し、その功績で後にノーベル物理学賞を受賞しました。日本の科学と知の力が、地球規模の問題に道を照らしたのです。

 しかし、現実の政策は必ずしもその知を活かしきれてはいません。東日本大震災以降、原発への依存を減らす方向へ舵を切った日本ですが、再生可能エネルギーの普及には依然として壁があります。政府は2050年カーボンゼロを掲げましたが、現場での実効性が問われています。GX(グリーントランスフォーメーション)の推進や官民投資の拡大も始まっていますが、理念を具体的行動に変えていく段階です。

 教育の現場に立つ者として思うのは、温暖化対策とは単なる環境政策ではなく、次世代への責任であるということです。科学的知見を理解し、課題を自分ごととして捉え、持続可能な社会の担い手を育てること。これは教育のミッションでもあります。世界の潮流がどう変わろうと、日本が果たすべき役割は明確です。未来を生きる子どもたちのために、私たち大人が今、覚悟を持って行動すること。それこそが、次の時代への希望の礎になると思います。