校長ブログ
地震の研究成果
2025.12.27
教科研究
12月27日
東京大学地震研究所が創設100周年を迎えたそうです。1925年、関東大震災の教訓を受けて設立されたこの研究所は、「地震現象の科学的探究と災害の予防・軽減」という使命を掲げて歩み続けてきました。碑文を起草したのは、物理学者の寺田寅彦氏。自然の前に謙虚であることの大切さを説いた寺田氏の精神は、今なお多くの研究者の心に息づいています。
地震研究所の100年の歴史には、「知を社会に還元する」という姿勢が一貫して見られます。例えば、地震の規模を定量的に示す「地震モーメント」の提唱や、断層をずらす力を物理モデルで説明した丸山卓男氏の研究などは、単なる学問的成果にとどまらず、人々の安全と命を守るための基盤を築いたものでした。研究の成果が社会の安全へとつながるという理念は、教育にも通じる普遍的な原理です。
近年、地震研ではAIを活用した研究が進んでいるとか。莫大な地震計のデータをAIが解析し、人間の目では見逃すような小さな地震を検出することができるようになりました。また、過去の紙記録をAIで分析し、数十年前の「スロー地震」を見つけ出す試みも始まっています。AIが過去を再生し、未来の防災に貢献するという構図には、教育の未来像と重なる部分を感じます。
教師もまた、生徒たちの学習記録という膨大なデータを日々扱っています。その中には、見逃されてきた才能や、まだ芽吹いていない可能性が潜んでいます。AIやデジタルツールの活用は、単なる効率化のためではなく、生徒たちの中にある「学びの源」を見つけ出す営みであると考えています。過去の学びを丁寧に掘り起こし、潜在的な力を可視化することは、まさに地震研究所が「地殻の深部」を探る作業に通じます。
地震研の古村孝志所長は、「新たな知見や技術は積極的に取り入れなければならない」と述べられています。教育もまた、変化を恐れずに新しい技術を取り入れる柔軟さが求められています。AIやデジタルツイン、そして国際協働など、新たな学びの道具を前向きに受け入れ、子どもたちとともに未来を切り拓いていく姿勢が大切です。
100年にわたる地震研究の歩みがそうであったように、教育の営みも終わりのない探究です。地球の深層を見つめ続ける科学者たちのように、私たちも人の成長という深い地層を掘り下げながら、未来への希望を描いていきたいと思います。