校長ブログ

新春対談③ー次期学習指導要領をどう読み解くか

2026.01.05 カリキュラム・マネジメント

1月5日

 教育評論家K との対談から。

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K:中央教育審議会の特別部会から次期学習指導要領の論点整理が出ましたね。今回は情報活用能力の抜本的強化とギフテッド教育が大きな柱と聞きました。

校長:今回の素案は、単に教科の枠を見直すだけではなく、学びの構造そのものを再設計する内容です。AIの進展やDX社会の到来を踏まえて、情報を使いこなす力を基盤に据えようという方向が明確に示されました。

K:中学校では"技術・家庭科"を分けて"情報・技術科(仮称)"を設けるという点が注目されています。

校長:情報を教科として体系的に扱う意図があると思います。単にプログラミングを教えるだけではなく、AIやデータをどう活用し、社会にどう責任を持つか―つまり、情報倫理や判断力を育む科目です。本校でも生成AIを活用した英語プログラミング活動を進めていますが、生徒たちは想像以上に柔軟にAIを使いこなし、自分の言葉で考えるようになっています。

K:なるほど。とはいえ、授業時数が増える分、他の教科とのバランスが課題になりますね。

校長:そこを見据えて、素案では「調整授業時数制度」が検討されています。これは、学校が独自に授業時数を再配分できる仕組みで、地域や学校の実情に応じてカリキュラムを再構築できる。まさにカリキュラム・マネジメントの制度化ともいえる改革です。

K:確かに、現場にとっては大きな裁量の拡大です。反面、それを使いこなす力量が求められますね。

校長:おっしゃる通りです。自由度が高まるほど、学校の理念とビジョンが問われます。何を優先し、どんな学びを保障するのか―その判断こそがカリキュラム・マネジメントの核心です。

K:もう一つの焦点、ギフテッド教育についてはいかがですか? 特異な才能を持つ子どもを大学や外部機関で学ばせる制度が新設されるようですが...

校長:非常に意義ある一歩だと思います。特別な才能を持つ子が、通常の授業では十分に力を発揮できていないケースもあります。横並びではなく個別最適化を実現する制度として期待しています。

K:ただ、対象の認定や運用は難しそうです。

校長:そこが最大の課題ですね。IQだけでは測れない才能が無数にあります。結局は、教師が子どもの可能性を見抜き、柔軟に学びを設計できるかどうか。学校と外部機関、専門家をどうつなぐか。その調整力が問われます。

K:なるほど。つまり、ギフテッド教育もカリキュラム・マネジメントの延長線上にあるということですね。

校長:そうです。個別最適な学びと協働的な学びをどう両立させるか―これが次期学習指導要領のポイントです。生徒一人ひとりの"強み"を活かす学びは、本人のモチベーションを高めるだけでなく、仲間との協働をより深くします。才能を競わせるのではなく、互いの得意を持ち寄って社会に貢献できる力を育む。これが目指すべき方向です。

K:ギフテッドという言葉そのものについても、文科省は慎重ですね。

校長:ええ。あえて特定分野に特異な才能のある児童生徒と表現しているのは、固定的なイメージを避けるためでしょう。才能は学力だけではなく、芸術や発想力、人との関わり方にも表れます。多様な可能性を開いていく視点が大切です。

K:こうした流れは、一律の教育から多様な教育への転換と言えそうですね。

校長:まさにその通りです。教育は効率ではなく可能性を中心に置く時代に入ります。教師自身が学び続け、仲間と共にカリキュラムをデザインする力を高めることが、何より求められています。

K:最後に、校長先生から教育関係者や保護者にメッセージをお願いします。

校長:次期学習指導要領は、未来の教育を現場の手で創り出すためのチャンスです。生徒一人ひとりの可能性を信じ、学校と社会が協働して育てていく。その覚悟を私たち大人が共有できるかどうかが、これからの教育の分かれ目になるでしょう。制度を待つのではなく、学びを創る主体に。教師が変われば、学校が変わる。学校が変われば、未来が変わります。