校長ブログ

理系高校生

2026.01.10 カリキュラム・マネジメント

1月10

 文科省が理系教育の大転換に踏み出しました。高校段階から理系への進路を広げ、大学・大学院までの体系的な理系人材育成を強化するという大きな方向転換です。背景には、AIやロボット、データサイエンスなどの急速な技術革新、そして人口減少による人材不足の危機があります。経産省の推計では、2040年には理系の大学・大学院卒が約100万人不足し、AI関連の人材だけでも約326万人が足りなくなるとされています。まさに「理系立国」への再構築が問われているのです。

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 文科省によると、高校生(1学年で約95万人、2024)のうち、理系が27%、文系が47%を占めるとのこと。依然として文系志向が強い状況です。文科省はこれを2040年までに理系4割、文系3割に転換することを目指しています。つまり、高校教育段階から理系志向の生徒を育てる仕組みをつくるという方向性です。

 そのための中核となるのが、2026年度に新設される数千億円規模の基金です。全国から選ばれた重点校に億円単位の予算を配分し、理系カリキュラムの拡充や3Dプリンター、実験機器の整備、高性能端末の導入などを支援します。2002年に始まったスーパーサイエンスハイスクール(SSH)事業が先駆けでしたが、今回はその数十倍規模の構想です。理系教育を核にした高校改革が全国的に進むことになるでしょう。

 同時に、大学への支援も拡大します。理系学部の新設を後押しするため、2022年度に創設された3,000億円の基金をさらに1,000億円上積みする方針です。これまでに延べ261校が選定され、1校あたり最大20億円の助成を受けてきました。政府はこの支援を通じて、理工農系や保健系の学生割合を現行の3割から2040年までに5割へと引き上げる目標を掲げています。

 ただし、大学側の理系拡充は高校段階での理系志向者の増加とセットで進めなければなりません。理系学部を増やしても、志望者がいなければ定員割れが起きてしまうからです。高校での探究学習や大学・企業との連携が重要となります。とくに、理数科目を「苦手」と感じる生徒が多い日本では、学びの面白さを実感できる実践型の学びをどう設計するかがポイントになります。

 そしてもう一つ注目すべきは、理系人材の増加と並行して進む「文理融合」の潮流です。データサイエンス、環境、倫理、AI社会の課題など、どれも文理をまたぐ知の統合が求められます。理系教育の強化とは、単なる理数偏重ではなく、社会を科学的に読み解き、未来を設計できる人材の育成でもあります。

 理系教育の再構築は、日本の教育システム全体の再設計に直結します。今後、学校現場では理系を育てる学校づくりと探究で生徒の好奇心を支える学びの両立が求められるでしょう。教育の現場から、未来の科学立国を支える担い手をどう育てるかがこれからの教育関係者に課せられた使命だと感じています。