校長ブログ
ノーベル賞
2026.01.15
教科研究
1月15日
2025年のノーベル賞に、日本からまた二人の研究者が選ばれました。大阪大学特任教授の坂口志文氏、そして京都大学特別教授の北川進氏です。お二人の偉業は、科学の根幹を揺るがすような発見と発明であり、日本の学術の底力を世界に示すものでした。坂口氏は「制御性T細胞」の発見によって免疫の仕組みに新たな地平を拓き、北川氏は「金属有機構造体(MOF)」の研究で、環境・エネルギー分野に革新をもたらしました。
日本のノーベル賞受賞者は2000年以降だけで22人にのぼり、世界でも米国に次ぐ水準にあります。しかし、私たちはその事実を誇りに思うと同時に、冷静に次の課題を見据える必要があります。というのも、ノーベル賞の対象となる研究成果の多くは20〜30年前に生まれたものだからです。つまり、現在の日本の研究力がそのまま未来の受賞につながるとは限りません。
文科省のデータによれば、日本の科学論文数は1990年代には世界2位でしたが、現在は5位に後退しています。引用数の多い「注目論文」ではさらに順位を下げています。研究開発費も主要国に比べて伸び悩み、博士号取得者数も横ばいが続いています。若手研究者の多くが任期付きの不安定な職に就いており、安心して研究に打ち込める環境が十分とはいえません。
しかし、今回の坂口氏も北川氏も、受賞につながる研究は20代〜40代の頃に行われたものです。創造的な挑戦が芽吹くのはまさに若き日であり、その芽を育てる環境づくりこそが未来の日本を決定づけるのだと思います。北川氏は受賞の際、若手研究者に研究時間を確保する必要性について語られました。その言葉には、研究の本質を知る者の静かな説得力があります。
教育の現場もまた同じです。子供たちが安心して挑戦し、失敗し、そこから新しい発見を得られる環境をどう整えるか。研究も教育も、土台にあるのは人を育てる営みです。国の科学技術政策だけでなく、私たち学校現場に携わる者も、次世代の探究者を育む土壌づくりに力を注がなければなりません。
未来のノーベル賞は、今日、教室の片隅で目を輝かせている一人の生徒から生まれるかもしれません。両氏の歩みは、次代を担う若者たちへの何よりの励ましであり、私たち教育者にとっても希望の灯です。