校長ブログ

国立大の値上げ

2026.01.26 大学進学研究

1月26

 ここ最近、国立大学が相次いで授業料の引き上げに踏み切るというニュースが続いています。来春からは埼玉大学に加えて、首都圏以外では初めて山口大学と名古屋工業大学が引き上げを実施します。物価や人件費の上昇が続く中で、教育・研究のDX推進や国際化への対応を急ぐための判断だとされています。

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 山口大学の谷沢幸生学長は、「授業料を据え置くと、学生に我慢し続けてもらうことになってしまう」と記者会見で述べ、学習環境改善の必要性を強調しました。現在年間535800円の授業料を、20264月入学者からは20%引き上げて642960円にするという大きな改定です。修士課程も翌年度から同様に改定されます。

 運営費交付金が減少傾向にある中で、物価上昇が追い打ちをかけ、大学全体の資金繰りが厳しさを増しています。一部の教職員や学生からは「決め方が唐突」との声も出ていますが、老朽化した設備の更新や教育力強化を考えると、先延ばしできない状況があったのでしょう。

 授業料引き上げによって山口大学は年間1.6億〜1.8億円程度の増収を見込んでおり、Wi-Fi環境整備に7億円、空調設備更新に9億円など、優先分野から整備を進めるとしています。学生の学びの質を高めるためにICT環境を整えることは、今やどの大学にとっても急務です。

 国立大学の授業料は2005年度から標準額が据え置かれ、最大20%まで引き上げが可能です。これまで引き上げた大学は東京大学や千葉大学など首都圏が中心で、地方大学は「進学機会の確保」という使命から慎重な姿勢を続けてきました。しかし、国際競争力の低下やDX・研究力強化の必要性が高まる中で、大学が自律的に財務体質を転換する流れが広がりつつあります。

 名古屋工業大学や埼玉大学は、AIやデータサイエンス教育の拡充を理由に挙げており、最先端設備や研究データベース、国際性育成などに投資するとしています。どの大学も、未来の社会を支える人材育成に向けて踏み込んだ判断をしている印象です。

 一方で、経済的に厳しい学生への支援をどう強化するかは重要な課題です。山口大学も埼玉大学も授業料減免制度の拡充を検討しており、外部資金の獲得力を高める必要性が指摘されています。欧米のように寄付金や基金を活用した奨学金体系を整えることは、日本の高等教育にとって避けて通れない課題だと感じています。

 教育は未来に向けた投資です。どのように財源を確保し、学生の学びを支えるか。日本全体の大学が同じ問いに向き合っている今、私たち学校現場に携わる者も、その動向を丁寧に見つめ続けたいと思います。