校長ブログ
英語教育を考える㊻ーAI時代に必要な英語力とは何か
2026.02.20
教科研究
2月20日
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保護者:最近、生成AIの進化が本当に早いですよね。翻訳の精度なんて、もう人間と見分けがつかないほどで、「英語って、もう勉強しなくてもいいのでは?」と感じることもあるくらいです。実際、子どもたちにはどんな英語力が必要になるのでしょうか?
校長:確かに、そうした声はよく伺います。しかし、AIが進化するから英語が不要になる、という理解はむしろ逆でしょう。AI時代だからこそ、英語は学びの枠組みを再構成するための言語として重要性を増しているのですから。
保護者:枠組みを再構成する言語というのは、どういう意味でしょうか?
校長:例えば、AIは大量の情報を瞬時に加工し、それらしく見える文章を出力します。でも、それが学習者にとって適切なのか、あるいは課題に本当に合致しているのかを判断し、必要に応じて方向付けをしていくのはあくまで人間です。英語はその際に、思考の構造を可視化し、自分の意図を精緻に外化するためのツールとして機能します。ですから、英語教育は正解を出すこと以上に、どう学びを構築するかという領域にシフトしていく必要があります。
保護者:英語で思考の構造をつくる、ということですね。
校長:そして、もう一つ大切なのが、英語が協働の基盤になるという点。本校では海外の学校とオンラインでつないだ遠隔協働学習に取り組んでいますが、事前準備としてAIを使うことで、子どもたちは論点の把握や背景知識をかなり効率的に吸収することができます。ただ、実際に海外の同世代と議論を始めると、英語を使って相手の意図を読み取ったり、対話の流れを自分たちで組み立てたりする必要が出てきます。AIが整えてくれるのは土台までで、そこから学びを動かすのは生徒自身です。
保護者:なるほど、単に通じればよいという話ではなくて、対話を組み立てる力なんですね。
校長:英語はまさに協働の回路を開くインフラのようなもの。そしてもう一つ、探究活動との関係も重要です。AIによって資料検索や仮説形成は以前よりスムーズになりましたが、世界の知と接続し、それを自分の問いに再編集していく段階では、英語による読解力が不可欠です。英語を介して世界と対話できると、探究の取り組みが一段深く、広くなります。英語は負荷というより、視野を拡張するレンズのようなものになっていきますね。
保護者:探究の深まりにも英語が関わっているんですね。
校長:そこが重要で、さらに言えば、AI時代の英語力は学びの自律性にも大きく関わります。AIの提示する複数の選択肢を比較して、どの方向へ進むべきか判断する。その際に必要なのは、英語で概念を理解し、論理構造を扱う力、つまりメタ言語的な能力です。英語学習は技能習得だけでなく、学びそのもののデザインを行うための"方法知"の獲得にもつながっていきます。
保護者:英語を学ぶ意味が、これまでとは全く違う形で見えてきますね。
校長:はい。AIの進化は脅威ではありません。むしろ、英語教育の目的を再定義し、技能偏重から脱していく絶好の機会です。英語を学びを設計し、協働を実装し、未来を創るための言語として位置づけ直す。これが、AI時代における英語教育の核心だと考えています。
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