校長ブログ
英語教育を考える㊷ーどうしたら英語が好きになるのか?
2026.02.06
教科研究
2月6日
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保護者:子どもが英語を暗記中心の科目として捉えてしまっていて、なかなか興味が持てないようです。英語へのポジティブな態度形成を促す方法はあるのでしょうか?
校長:実に本質的な問題提起だと思います。第二言語習得(SLA)の研究でも、情意的要因、とりわけ学習者の動機づけと学習経験の質が言語発達に大きく寄与することが明らかになっています。英語を好きになる契機は、学習者が英語を媒介として世界と接続できると認知した瞬間に生じる、いわば学習観の転換です。
保護者:世界と接続する...というのは具体的にどういうことなのでしょうか?
校長:本校では、国際協働学習やオンライン交流のように、生徒が言語使用の社会的文脈を体験できる設計を行っています。SLA領域では、input・output・interaction の三要素が統合された学習環境が、習得を促進するとされていますが、まさにその経験の統合を意図的に組み込んでいます。学習科学の観点でも、authentic learning、つまり、実社会と接続した学習課題は、内発的動機づけを大きく高めることが示されています。
保護者:子どもは間違えることへの不安が強いようで...
校長:その情動的側面は非常に重要です。言語習得にはリスクテイキングが不可欠ですが、それを支えるのが学校側の教育的文化です。本校ではprogress over perfection(完璧より前進)を共有価値とし、誤りを学習データとして扱う形成的評価の哲学を徹底しています。授業デザインでは、協働的対話を中心に据え、ペアワーク・タスクベースド学習やプロジェクト型学習(PBL)を組み合わせ、安心して試行錯誤できる空間を組織的に構築しています。
保護者:英語と他教科のつながりも、子どもの興味に影響しますか?
校長:大いに影響します。カリキュラム・マネジメントの視点では、教科横断的な学習は認知的文脈を豊かにし、学習者の意味づけを飛躍的に高めます。例えば、社会科で扱った歴史テーマを英語でディスカッションする、理科のデータ分析を英語で発表するなど、教科間の有機的接続が生まれると、認知的負荷が適度に分散され、学習の転移が促進されます。こうしたカリキュラムの構造化は、生徒の興味を喚起しつつ、学習の持続可能性を高める重要な仕組みです。
保護者:将来のイメージと英語の関係も大事なのですね。
校長:その通りです。教育心理学では、自己効力感が学習の持続に決定的な役割を果たすとされますが、とりわけ未来志向の自己効力感が英語の態度形成を左右します。本校では、海外研修、国際共同プロジェクト、専門家との対話など、未来の自分と英語のリアルな接点を意図的に設計しています。生徒は成功体験を積む中で、英語は自分の活動領域を拡張する道具であるという認知を形成し、態度が肯定的に変容していきます。
保護者:今日のお話で、英語を好きになるには、経験・文化・カリキュラム設計が密接に関係していることがよく分かりました。
校長:まさにご指摘の通りです。英語学習は個々の努力だけで成立するものではなく、学校が学習環境としてのシステムを精緻にデザインすることで初めて、態度・技能・知識が総合的に育まれます。本校は、学習者が英語を通して世界と接続し、自らの未来を再構築できるよう、教育的文脈をこれからも丹念に積み上げて参ります。
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