校長ブログ
課題解決力と地域を変える若い力
2026.02.23
グローバル教育
2月23日
近年、高校生の海外留学が再び活気を取り戻しています。文科省の統計によれば、2023年度に海外留学を経験した高校生は 3万4,885人。コロナ禍で落ち込んだ21年度の11倍に回復し、ピーク時の7割を超える水準となりました。特に短期留学が9割以上を占め、地域や学校の特色に応じた多様な学びが広がっています。
都道府県別にみると、最も留学率が高いのは 兵庫県の2.72%。県立高校が長年にわたり、オーストラリアやアジア諸国への留学プログラムを積極的に展開してきた成果です。近年は、生徒自身がテーマと行き先を設定する探究型留学も始まり、国際支援を志してフィリピンの貧困地域を訪れる生徒、韓国でK-POPダンスを学ぶ生徒、ニュージーランドでラグビーに挑戦する生徒など、多様な挑戦が生まれています。
一方、留学を"地域の未来づくり"に結びつけている自治体もあります。青森県は18年度から海外派遣プログラムを拡充し、24年度には地域課題の解決策を探る「海外フィールドワーク」を開始しました。大湊高校の生徒たちは台湾・花蓮県を訪ね、防災における官民連携の重要性を学びました。帰国後、学びを地域に還元しようと防災イベントを企画し、自ら地域住民へ発信したことは特筆すべき実践です。学びが"行って終わり"ではなく、地域社会を変える行動につながっている点に、大きな教育的価値があります。
また、留学を契機に起業へ踏み出した若者もいます。愛媛県久万高原町出身の鷲野天音さんは、高校生のときに英国でSDGsを学び、その後20カ国を巡る中で地域振興の視点を深めました。帰国後に地元で創業し、地域ブランディングを手がけています。高校時代の海外経験が、その後の人生の方向性を決定づけた好例と言えるでしょう。
高校生の時期は、価値観が柔軟で、世界と自分の関係を問い直す力が最も強く働く時期です。だからこそ、海外留学は単なる語学学習に留まらず、「社会をどうよくするか」を自分事として捉えるきっかけになります。一方、円安や物価高、大学入試時期の早期化など課題もあり、多様な資金源の確保やオンライン交流との組み合わせなど、留学環境そのもののアップデートも求められています。
世界とつながる経験を、地域や学校の学びにどうつなげていくか。いま私たち教育関係者に問われているのは、留学を"点"の経験で終わらせず、生徒の人生と地域の未来を動かす"線"の学びへと設計できるかどうかです。海外で得た気づきを、自分の足元の社会をより良くする行動へとつなぐ若者が、確実に育っています。教育の力が地域の力になる。その未来を、共につくっていきたいと思います。