校長ブログ

デジタル技術と学習する組織

2026.02.25 EdTech教育

2月25

 デジタル技術は、その時代ごとに新しい名称をまといながら社会に現れてきました。IoTDX、生成AIAIエージェント、フィジカルAIなど、流行語は次々と移り変わっています。しかし、その背後にある本質は一貫しています。実世界をデータとして捉え、そのデータを活用することで意思決定の質を高め、組織や社会の在り方を変えていくという構造です。技術は目的ではなく、意思決定と成長を支えるための道具であるという点を見失ってはなりません。

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 不確実性が常態化した現代において、まず共有すべき前提は、これをすれば必ず成功するという万能な解はないということ。現場での試行錯誤と対話を積み重ねながら、未来の「当たり前」を構想し続けることが求められています。生成AIは驚異的な進化を遂げていますが、その内部で何が起きているのか、また最終的にどのような姿に至るのかを正確に見通せる人はいません。ただ一つ確かなことは、技術は必ず大衆化し、想定外の周辺領域に新たな価値獲得の機会を生み出すという点です。かつてのパソコンがそうであったように、AIもまた新しい市場を連れてくる存在です。

 重要なのは、技術の浸透には時間がかかるという認識です。デジタル技術の導入と定着の間には、必ず大きな隔たりが生じます。これは技術そのものの問題ではなく、人材、組織文化、業務プロセスの問題です。現場ではデータやAIを活用したいという需要が高まっていますが、それを支えるスキルや制度といった供給が追いついていません。技術は急速に進化しますが、人と組織が変わるには時間が必要です。そのため、デジタル活用は短期的成果を求める施策ではなく、長期的な学習の営みとして位置づける必要があります。

 デジタル技術の本質は「意思決定の質」を高めることにある、という点です。技術導入そのものが目的化してしまうと、DXは必ず行き詰まります。重要なのは、技術がどのように価値獲得に寄与し、どのような意思決定を可能にするのかを問い続けること。価値創造と価値獲得は同一ではありません。どのような生活価値や顧客価値を生み、誰がその価値を享受するのかという設計こそが、技術活用の成否を左右します。

 こうした認識を踏まえ、組織が実践すべきことは二つあります。一つ目は、不確実性に強い学習する組織をつくること。AI時代の競争優位は、技術そのものではなく、人と組織がどのように学び続けるかにあります。多様な専門性や価値観が交差し、対話を通じて知を統合していく過程が欠かせません。その際、「賢明な失敗」を許容する文化が重要になります。挑戦には失敗が伴いますが、その経験こそが次の成長を支える基盤となります。

 二つ目は、AIが「働きやすい」環境を整えること。質の高いデータの整備と、現場が安心してAIを活用できる心理的安全性の確保が不可欠です。AIは人に代わる存在ではなく、人の意思決定を支える協働者です。人とAIが共に機能する環境を整え続けることが、これからの組織にとって最も重要な基盤となります。

 デジタル技術への投資額が未来を決めるわけではありません。組織としての学習力と共創力こそが、価値獲得の成否を左右します。未来は与えられるものではなく、現場の試行錯誤の中から創り出されるもの。その営みを静かに、しかし確実に支える存在として、デジタル技術を位置づけていくことが求められています。