校長ブログ
英語教育を考える㊾ー物語文の読み方
2026.03.11
教科研究
3月11日
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校長:どうしたんだい。ずいぶん考え込んだ顔をしているね。
生徒:お時間をいただきありがとうございます。大学入試の英語の物語文について、どうしても不安があり、ご相談させていただきました。
校長:英文読解問題を意識しているんだね。
生徒:はい。長文自体は読めている感覚はあるのですが、設問になると、自分の読みが正しいのか分からなくなります。
校長:それは読みが浅いというより、読みの立ち位置が定まっていない状態だと思うよ。物語文は、背景知識云々というより、書いてある内容をどう理解したかを問うからね。
生徒:どう理解したかというのは、内容把握とは違うのでしょうか?
校長:内容把握はスタート地点にすぎない。物語文では、テクスト全体をどう構造化し、意味づけたかが評価されるんだよ。
生徒:どうしても、一文一文を正確に訳すことに時間をかけすぎているように思います。
校長:姿勢自体は誠実だよ。ただ、物語文では注意が必要だね。物語は情報の集積ではなく、意味が時間的に展開するディスコースなんだ。
生徒:ディスコースとして読むということですね。
校長:そう。誰の視点で語られているのか?、どこで価値判断が揺らいでいるのか?、どんな変化が起きているのか?といった流れを追えるかどうかが本質的な力だよ。
生徒:設問で登場人物の心情を問われると、選択肢がどれも正しそうに見えて迷ってしまいます。
校長:それは良問に向き合っている証拠だね。選択肢は、部分的には正しいものが大半。だからこそ、テクスト全体の解釈と最も整合するものを選ぶ必要がある。
生徒:整合性でしょうか?
校長:うん。自分の読みが、冒頭から結末まで一貫しているか?、その人物理解が、行動や語りの変化と矛盾していないか?など、そこを見ているんだ。
生徒:物語の内容が、自分の経験から遠いと感じることがあります。
校長:それもよくあることだね。でも、入試は君の経験を測っているわけじゃない。言語を通して他者の経験を追体験できるか、つまり知的想像力を問うている。
生徒:想像力も、評価の対象になるのでしょうか?
校長:もちろんだよ。論理だけでなく、感情や価値観の変化を読み取れるかどうかが、大学での学びに耐えうるリテラシーかどうかを判断する材料になるんだ。
生徒:では、読むときに最も意識すべき点は何でしょうか?
校長:語り手は誰か?、変化はどこで起きているか?、そして、この物語が読者に何を考えさせようとしているのか?この三点を自分の言葉で整理することだ。
生徒:それが、そのまま記述問題の答えにつながるという理解でよろしいでしょうか?
校長:そうだね。よい記述答案は、思いつきでは書けない。一貫した読解の結果として、必然的に書かれるものなんだ。
生徒:英語長文に対して、どうしても身構えてしまいます。
校長:それは自然だね。でも、英語の物語文は君を困らせるためにあるんじゃない。考える時間を与えてくれる、最もフェアな問題形式なんだ。
生徒:フェアですか?
校長:知識量だけでなく、思考の質がそのまま表に出る。だからこそ、物語文を出し続けているんだね。
生徒:少し見方が変わった気がします。
校長:物語文は、正解探しの場ではない。君がどんな読み手で、どんな思考をする人間かが、最もはっきり現れる場なんだよ。
生徒:ありがとうございます。自分の読みを信じて、全体を捉えることを意識してみます。
校長:よい気づきだね。英語はもう、君の中にある。あとは、その使い方を自覚するだけだよ。
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