校長ブログ

働くとは何か

2026.03.25 トレンド情報

3月25日

「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」というフレーズが象徴的に語られた2025年、日本社会はあらためて「働くとは何か」を問い直す局面に立っています。労働時間はこの30年で約2割減少しました。1990年には年平均2064時間だった総実労働時間は、2024年には1643時間まで縮小しています。(厚労省『毎月勤労統計』)数字だけを見ると、私たちは以前より働いていないようにも見えます。しかしそれは、決して怠けているからではありません。

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 背景には、パートタイム労働者の増加があります。パート社員の比率は1990年の12%から、2024年には30%台へと上昇しました。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は、労働時間減少の最大要因は、正社員から時短のパート社員への置き換わりにあると指摘しています。

 問題は「時間が減ったこと」そのものではありません。時間が減る中で、生産性をどう高めてきたのか、あるいは高められなかったのか、そこに本質があります。OECDによれば、日本の労働時間は1990年から2024年にかけて約20%減少しましたが、米国は4%減にとどまり、現在も米国の方が1割ほど長く働いています。それにもかかわらず、日本の時間あたり労働生産性は主要国で低迷し、日本生産性本部の調査ではG7で最下位の28位です。

 小黒一正氏(法政大学教授)は、仮に労働時間が1990年水準で維持されていれば、日本の一人当たり実質GDP2023年までに1.68倍に成長していたと試算しています。実際は1.3倍にとどまり、生産性を伴わない労働時間の減少が、経済力の低下につながった可能性が示唆されています。

 働き方改革は、2019年に残業時間の上限を法定化し、過労防止を社会全体で制度化しました。(厚労省『働き方改革関連法』)これから求められるのは、その先です。長時間労働に戻るのではなく、生成AIなどの技術革新を取り込み、限られた時間で価値を生み出す力を育てることです。働く時間を延ばすのではなく、働きたくなる環境をつくること。その発想の転換こそが、これからの日本を支える力になることは自明なことです。