校長ブログ
大学教育の質
2026.05.07
大学進学研究
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5月7日
文科省が、大学の認証評価制度の見直しを検討しているという報道がありました。これまで大学全体の運営を「適合」か「不適合」かの二段階で評価していた制度を、学部・学科ごとに三〜四段階で評価する仕組みに変えるというものです。

これまで日本の大学選びは、偏差値やブランドイメージに大きく左右されてきた感があります。もちろん入試の難易度は一定の指標ではありますが、それだけで大学の教育の質を判断できるわけではありません。むしろ本来問われるべきなのは、その大学で学生がどれだけ成長できるのかという教育の内容であり、学生自身が感じる成長実感です。
今回の見直し案では、学部・学科ごとに教育の質を評価する仕組みが検討されています。基準を満たしていない、基準を満たしている、さらに優れた教育的取り組みがある、というように段階的に評価されることになります。ここで注目すべきなのは、学生が卒業までに身につけるべき能力を明確に定義し、その達成度をきちんと測っているかどうかが評価対象になる点です。
これは言い換えれば、教育の成果を可視化するということです。教育は本来、結果が見えにくい営みです。しかし、カリキュラム設計の段階で到達目標を明確にし、その達成状況を多面的に評価することで、教育の質は確実に高まります。これは学校教育の現場でも同じ。中高におけるカリキュラム・マネジメントの重要性が指摘されていますが、まさに大学にも同じ視点が求められていると言えるでしょう。
さらに今回の制度では、大学全体のマネジメントも評価対象になります。ただし財務などの経営指標は簡素化し、教育の質に重点を置く方向が示されています。これは非常に象徴的な変化です。大学が単なる組織運営の単位ではなく、教育機関としてどれだけ学生の成長に貢献しているかが問われる時代になってきたということです。
その背景には、急速に進む18歳人口の減少があります。足元では一時的に微増傾向が見込まれていますが、2027年以降は再び減少に転じ、2035年には大学進学者数が約59万人まで減ると予測されています。現在の国公私立大学の募集定員規模(約63万人)が続いた場合、1割弱が定員割れになる計算です。つまり、高校生に選ばれない大学の淘汰が急速に進む可能性があります。
これからの大学は、存在しているだけでは選ばれない時代に入ります。だからこそ、教育の質を社会に対して説明できる大学が生き残っていくことになります。生徒が大学を選ぶ際に、偏差値だけではなく、どのような教育が受けられるのか、どんな力が身につくのかという情報が分かりやすく示されることは、大きな価値があります。
教育の世界では、「何を教えたか」よりも「何ができるようになったか」が重要です。今回の大学評価の改革が、単なる制度変更にとどまらず、日本の高等教育全体が「学習成果」を中心に据える契機になることを期待したいと思います。そうした流れの中でこそ、本当に学生を成長させる大学が社会から選ばれていくのではないでしょうか。