校長ブログ

AI時代に創造の価値をどう守るか

2026.06.06 EdTech教育

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6月6日

 生成AIが社会に急速に浸透する中で、いま私たちは大きな転換点に立っています。ソニーグループが、AIが生成した音楽から「どの楽曲が学習・生成に使われたのか」を割り出す技術を開発したという報道がありました。この動きは、単なる技術革新にとどまらず、創造の倫理と価値の再定義に関わる重要な一歩だと受け止めています。

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 近年、音楽や映像、出版の分野では、AI開発企業による著作物の無断学習・無断生成をめぐるトラブルが相次いでいます。著名なアーティストの声質を模倣した楽曲がインターネット上に流通する現象は、その象徴的な事例。創作とは本来、時間と経験、葛藤の積み重ねの上に成り立つ営みです。その成果が透明性なく吸収され、再構成されるとすれば、私たちは「学習」と「盗用」の境界をどのように定義すべきでしょうか?

 ソニーグループの研究開発部門であるソニーAIが開発した技術は、AI生成楽曲を分析し、例えば、ビートルズの楽曲が3割、クイーンが1割といった形で、元作品の寄与度を数値化できるといいます。もしこれが実用化されれば、AI開発元に説明や対価を求めることが可能となり、クリエーターへの収益分配の仕組みづくりにも資することになります。

 日本の著作権制度には、作詞・作曲者や出版社が持つ「著作権」と、実演家やレコード製作者が持つ「著作隣接権」があります。ソニーグループは世界的な音楽制作会社・出版社を傘下に持ち、マイケル・ジャクソンの楽曲の著作権の一部も管理しています。従って、同社にとってこの問題は理念的課題であると同時に、現実的な経営課題でもあります。

 興味深いのは、AI開発元の協力が得られない場合でも、既存楽曲との比較分析によって元作品を推定する手法を構築した点。さらに、スタジオジブリの作風の模倣や、学習画像のそのままの出力を防ぐ技術も開発しているといいます。これは音楽にとどまらず、映像、ゲーム、キャラクター分野にも応用可能でしょう。

 しかし、技術が存在するだけでは十分ではありません。AI企業がどこまで積極的にこうした仕組みを取り入れるのかは未知数です。性能向上を優先するあまり、知的財産保護への配慮が後景に退く懸念も指摘されています。実際、ユニバーサル・ミュージック・グループはAI企業との訴訟を経て、対価を伴うライセンス契約を結ぶという現実的な解決を模索しました。音楽業界は、対立と協調の間で新たなビジネスモデルを模索しています。

 教育現場では、生成AIを「排除する対象」ではなく、「統御し、倫理的に活用する対象」として位置づける必要性を強く感じています。カリキュラム・マネジメントの視点から言えば、技術は目的ではなく、教育的価値を実現するための手段です。同様に、AIもまた創造の敵ではなく、創造の尊厳を守る枠組みの中でこそ活きる存在であるべきでしょう。

 創造の価値を可視化し、貢献を定量化する試みは、単に収益配分の問題にとどまりません。それは「誰の学びが、誰の創造を支えているのか」という問いを、社会全体に投げかける営みです。AI時代における公正とは何か?その答えは、技術だけでなく、私たち一人ひとりの倫理観と制度設計の成熟にかかっているのだと思います。