校長ブログ

企業お抱え学科

2026.06.08 大学進学研究

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6月8

 近年、大学は何のために存在するのか?という問いが、理念ではなく現実の課題として突きつけられています。学問の自由や研究の自律性は、大学が守るべき根幹です。しかし同時に、社会や産業とどのように接続し、どのような人材を育てるのかという点で、大学が大きな転換点に立っていることも否定できません。

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 そうした中で、経済産業省が示した企業と大学が連携して学科・研究科を設立するという方針は、日本の高等教育のあり方そのものを問い直す動きと言えます。企業がカリキュラム設計に関与し、研究者を教員として派遣、インターンや就職までを一体で考える。まさに人材育成を入口から出口まで設計しようとする試みです。対象は国公立大学に限らず私立大学にも及び、理系大学院、とりわけ博士課程が想定されていますが、分野は地域産業や企業ニーズに応じて検討されていくとされています。

 これまでの日本の大学教育では、大学が育てたい人材像と社会が求める人材像の間に、少なからず乖離がありました。大学は優れた研究力や技術シーズを持ちながらも、社会実装や事業化の視点が弱い。一方で企業は実務や事業化のノウハウを持ちながら、長期的に高度人材を育成する仕組みを単独で構築するのは容易ではありません。今回の産学連携型学科は、まさにその双方の弱点を補完し合う発想に立っています。

 特に重要なのは、これが単なる即戦力育成にとどまらない点。企業と大学が目標を共有し、オーダーメードでカリキュラムを設計することは、学修成果を明確にし、教育活動を可視化することにつながります。これは教育の質を高める上で、極めて本質的な視点です。

 台湾や韓国では、すでに先行事例が見られます。台湾ではTSMC(台湾積体電路製造)と大学が連携し、研究設備を整え、実務経験を重視した人材育成を行っています。韓国でも、法制度のもとで企業と大学が学科を設立し、卒業後の進路まで見据えた教育が展開されています。いずれも、人材育成を国家戦略として位置づけている点が共通しています。

 もちろん、日本で同じモデルをそのまま導入すればよいわけではありません。大学の自律性をどう担保するのか?、学問的価値と企業ニーズをどう両立させるのか?といった課題は残ります。ただ、産業界と距離を取ることが大学の矜持であるとする発想は、すでに見直しの時期に来ているのは疑う余地がありません。

 大学が変われば、高校教育のあり様も変わらざるを得ません。探究学習で育てる力、英語やICTを活用して社会とつながる力は、こうした産学連携型の高等教育と確実に接続していきます。教育は未来への投資です。大学と企業が本気で人材育成に向き合い、国がそれを後押しする。その成否は、教育に携わる私たち一人ひとりの姿勢にかかっているのだと思います。