校長ブログ

ダイバーシティ人材

2026.06.29 大学進学研究

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6月29日

 大学教育の現場で、DEI(多様性・公平性・包摂性)をめぐる動きが一気に加速しています。この潮流については単なる新しい教育トピックではなく、組織と社会のあり方そのものを問い直す本質的な転換として受け止めています。

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 例えば、埼玉大学大学院ではダイバーシティ科学専攻が新設されました。これは、DEIを中心に据えた国内初の修士課程であり、企業や行政で多様性推進を担う高度専門人材の育成を目指しています。注目すべきは、そのカリキュラム。インターセクショナリティ(交差性論)やケア論、クィア理論といった理論的基盤を徹底的に学ぶと同時に、現場での課題解決に直結する実践的な学びが組み込まれています。つまり、「理念」と「実装」を往還する設計になっているのです。

 ここで重要なのは、DEIが単なる理念的スローガンではなく、組織をどう動かすかというマネジメントの問題として位置づけられている点。ダイバーシティマネジメントやリーダーシップ論といった科目を通じて、実際の職場や地域での課題を調査し、改善策を構想するものであり、これは中高現場も学ぶべき点があると思います。

 また、この専攻設置の過程も示唆的です。学内外からの慎重論や、制度設計上の厳しい問いに対し、約100の組織から要望書を集め、社会的ニーズを可視化することで合意形成を進めたといいます。ここには、「現場の声」を起点に制度を構築するという、極めて実践的なリーダーシップが見て取れます。

 一方で、地域課題との接続を重視する動きも広がっています。茨城大学などが展開するプログラムでは、外国人との共生やジェンダーギャップといった課題に対し、学生が現地に足を運び、実体験を通して理解を深めています。知識の習得にとどまらず、経験を通じて価値観の揺さぶりを受ける。このプロセスこそが、真に社会を変える人材を育てるポイントになるのだと思います。

 教員養成の分野でも、同様の変化が起きています。多様な背景をもつ子どもたちが急増する中で、従来の枠組みでは対応しきれない現実が現場にあります。にもかかわらず、体系的に学ぶ機会は十分とは言えませんでした。今、ようやくそのギャップを埋める動きが始まっています。

 ただし、国際的に見れば、DEIをめぐる状況は一様ではありません。アメリカでは政策的な揺り戻しも起きています。だからこそ重要なのは、「なぜDEIなのか」という根本的な問いに立ち返ることです。流行や外圧ではなく、社会の持続可能性という観点から、自らの文脈で再定義する必要があります。

 大学は、単に人材を送り出す場ではありません。自らがDEIを体現する組織であるべきです。マネジメントの在り方を問い直し、教育と研究を通じて社会に還元していく。その循環をどう設計するかが問われています。DEIは「新しいテーマ」ではなく、避けて通れない前提。だからこそ、理念と実践を架橋するカリキュラムをどう構築するか。今、まさにその力量が問われているのだと強く感じています。