校長ブログ
AI時代の大学教育―問われているのは学びの価値
2026.08.18
大学進学研究
この記事は音声でも、お聴きいただけます。
8月18日
生成AIをめぐる大学界の議論が活発になっています。追手門学院大学では、AIアシスタント「OIDAI+」を導入し、履修登録や留学、就職相談など学生一人ひとりに応じた助言を提供しています。AIを単なる効率化ツールではなく、学生を次の対話や学びへ導く入口として活用している点は注目に値します。

しかし、日本の高等教育全体を見ると、AI活用はまだ発展途上。桜美林大学の田中一孝教授らによる調査では、生成AI利用のガイドラインを策定済みの大学等は45%にとどまり、32%は策定予定すらないとのこと。特に小規模大学では対応の遅れが目立ちます。
より重要だと考えられるのは「AI格差」の問題です。欧米では学生が公平にAIを利用できる環境整備が重要な政策課題となっています。しかし、日本では経済的要因によるAI利用格差への対応はほとんど議論されていません。学習インフラとしてのAIへのアクセスが大学によって大きく異なる状況は、教育の公平性という観点から看過できない課題です。
さらに、大学入学時点ですでに学生のAI経験には大きな差があります。東京都では全都立学校に「都立AI」を導入し、探究学習等で活用しています。一方で、十分な利用機会を持たない地域や学校もあります。中央大学の澁川幸加特任准教授が指摘するように、大学は学生の経験差を把握し、それぞれに応じた学習機会を設計する必要があります。
これは単なるICT活用の問題ではありません。国立情報学研究所の黒橋禎夫所長は、AIを「30万年に一度の変化」と表現しました。もしそうであるなら、大学教育もまた根本から問い直されなければなりません。
その際に忘れてはならないのが学習プロセスの価値です。京都大学の飯吉透教授は、到達点だけでなく、問いを立て、対話し、試行錯誤する過程こそが学びであると指摘しています。答えを得ることが容易になった時代だからこそ、その過程の価値はむしろ高まります。
AI時代に必要なのは、技術への対応ではなく、学びの本質への回帰です。初等中等教育から高等教育までを見通した中で一人ひとりの学習者が主体的に学び続ける力を育てること。それこそが、これからの教育に求められる使命ではないでしょうか?